オンラインゲーム殺人事件_葵_15章

魔王倒れる(29日目)


あの衝撃の日から3日…

イヴちゃんは来なくなっちゃったみたい。
やっぱり気が抜けちゃったんだろうな。
他もインしてるのかどうかは全然わかんなくて、必然的に魔王の周りをうろつくのは私達4人だけになっていた。



コウがレベル44になってて、私達は43。
魔王には3回目の挑戦だ。

ユートが攻防命中を上げる魔法をかけると、雑魚戦闘と違って敵の攻撃を他に向けない様にまずコウが切り込む。
レベルって言うのもあるけど…この中では一番防御高いから。

攻撃力も…素でシーフの4倍、エンチャの8倍あるんだよね…ベルセルクって…。
さらに装備できる武器防具自体の性能も一応ウォーリアと並んで数少ない純近接アタッカーだから私達より段違いに高い。
私が20とか30とかペチペチ削ってる間に、ガンガン100以上のダメージを与えてる。

一億は…コウのとこに行くんだろうな~…

別にそれには全然不満はない。
ユートの話じゃないけど、それこそコウは私達がいなくてもフロウちゃんがいればここに辿り着いてるもんね。
それに引き換え、私はコウがいなかったら魔王の姿も拝めないどころか、下手すれば死体になって川に浮いてたわけだし…。

もう今一億に関して頭に浮かぶのは単純な好奇心。
コウ…いったい何に使うんだろう?
そんな事を考えながらオートでペチペチと魔王を叩いている自キャラをぼ~っと眺めていると、いきなりコウが後ろに走った。

時間がかかってたせいか、少し後方で回復してるフロウちゃんの後ろに一度倒した雑魚敵がまたわいている。

いつも雑魚敵はフォローをいれるのがユートだったから当たり前にスルーしてたんだけど、いきなり動くコウの行動に不思議に思って注意してみると、ユートは切れかかってる能力アップの魔法をかけ直し中だ。

コウってよく見てるなぁ…。

感心しつつもフロウちゃんのフォローに走るコウを追いかける魔王をそのままオートで後ろからプスっと斬りつけた瞬間、

ピカ~って光を放って魔王の身体が霧散した。

え??えええ????
なんだかめでたそうな音楽がなってるよっ!
コングラッチュエーションだよっ!
なんか…私が倒した事になってる……?
ええええ????
呆然とディスプレイを眺める私をよそに、なんだか魔王を倒した祝いみたいな画面が流れて、ストーリーが進んで行く。
そして有無を言わせず終了画面。
めでたそうに平和が戻った事を喜ぶお城の面々の画面のまま、テロップが流れた。

『魔王討伐お疲れさまでした。
今回参加して頂いた皆様には当企業の側でささやかながら祝宴と粗品をご用意しております。
また、その場で一億円の授与式も予定しております。
明日午前中、それぞれのご自宅にお迎えにあがりますのでご自宅前でお待ち下さい。
なお、お迎えに上がる時間には多少差がございますので、別個メールにてお知らせいたします。』

なんだかあっけない終了宣言なんだけど、それでも全員に会えるのはちょっと楽しみだったり。



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