「…あなたも懲りませんねぇ……」
「そういう桜さんだって来てるじゃないですかっ」
「わ、私はアーサーさんの保護者なので、心配で…」
「あ、アーサーさんのエプロン姿っ!」
「どこですっ?!」
ロヴィーノの依頼で調理場を貸している調理人日和から、毎昼食後、ロヴィーノがアーサーに料理を教えているという情報を得て、覗き…ごほんごほん…いや、見守りに来ている。
「アーサーさん、新妻エプロンのアーサーさん、激写~~!!!」
とテンション高く開き直る…というか、言い訳をする気もない遠子と
「ああ、本当に心配です…。アーサーさん料理壊滅的なので…」
と言い訳をしつつカメラを構える桜。
どちらもやっている事は同じで、自慢のカメラでこっそり隠し撮り。
パシャパシャとシャッターを切るその目は真剣そのものだ。
「…私ね…最近ロヴィアサも良いなぁと思い始めて……」
パシャパシャ…とシャッターを切る遠子。
「何を言ってるんですか。アーサーさんはお館様の嫁と決まってるんですっ!」
と同じくパシャる桜。
「え~、色々な可能性を追求しましょうよ」
パシャっと遠子。
「却下ですっ!普通に考えてありえません。皆さん絶対にギルアサ派ですっ!断言できますっ!」
パシャシャッ!と桜。
「え~、皆さん絶対にってどのあたりで言えるんですかっ!」
パシャっ!
「絶対にお館様の方がアーサーさんに似合いますっ!強さ、包容力、身長差、全てにおいて完璧ですっ!」
パシャシャッ!
「ロヴィーノさんだって、腐っても本部長ですよ?本部長っ!
それにアーサーさんが苦手な料理が完璧ってポイント高いですよっ!!」
パシャッ!
「お話になりませんよ、ロヴィーノさんじゃ絶対的にダメな理由があるじゃないですかっ!」
パシャシャッ!
「なんですか、それっ?!」
パシャッ!!
「お館様も…そしてアントーニョさんも圧倒的な攻め様なんですよっ、攻め様っ!!」
パシャシャッ!!
「だからっ?!」
パシャッ!!!
「ロヴィーノさんがアーサーさんとくっついたら、ロヴィアサしかできませんけど、お館様とアーサーさんがくっつけば、ギルアサ、トニョロヴィと2カップルできるんですっ!!」
パシャシャッ!!!
「しまったっ!!それがあったかっ!!!!」
パシャッ!!!!
「お~ま~え~ら~~!!!没収っ!!!」
どうやらカップル論議と隠し撮りに夢中になりすぎたらしい。
ゴン、ゴンと2人の頭に降ってくる白い大きな手によるげんこつと、カメラを取りあげる褐色の手。
「隠し撮りは…あかんわなぁ…」
振り向くと眉を吊り上げるギルベルトと苦笑するアントーニョ。
「桜、お前まで何してるんだっ!!」
と怒られて身をすくめる桜をかばうように、ギルベルトをまあまあとなだめながら
「桜ちゃんはちゃんとお姫ちゃんがギルちゃんのやって主張してくれてたんやし、ええやん。堪忍したり?
まあでも隠し撮りはあかんから、カメラはいったん親分の方で預かってデータちゃんと処理した上で返したるから」
と言うアントーニョに、しょぼんとうなだれて謝罪をする桜。
「あたしのアーサー君の写真~~!!!」
と手を伸ばす遠子を
「やめておきなさ~い!!」
と、ひきずりつつ退出して行く。
その2人を見送って、カメラのデータを確認しつつ、
「ロヴィのエプロン写真ゲットやぁ~」
と、ご機嫌で自分のスマホにデータを移すアントーニョ。
それに、ギルベルトはじとぉっと呆れた視線を向けた。
それに、ギルベルトはじとぉっと呆れた視線を向けた。
「…お前…データ処分するって言ってなかったか?」
とギルベルトが聞くと、
「え?言ってへんよ?」
とにこりと答えるアントーニョ。
「うそつけ、さっき……」
「親分な、データを処理する言うたけど、処分するなんて一言も言ってへん」
「お前は~~~」
本当に悪びれずに堂々とそう宣言するアントーニョにギルベルトは頭を抱えた。
「ギルちゃんもいる?」
と、そんなギルベルトの反応を気にすることなく言うアントーニョにギルベルトは
「要らねえ」
ときっぱり。
「要らんの?」
と、それには驚いた顔のアントーニョに、
「おう。見たければ本物をいくらでも間近で見られるし、触れるしな」
と、にやり。
「こっ…の…爆発してまえーーー!!!」
とアントーニョが小声で叫んだ瞬間、少し離れた調理場で、オーブンが威勢の良い音をたてて爆発し、
「これ、何回目だよーー!!!」
と、遠くでロヴィーノが涙目で頭を抱えて叫ぶ声が響き渡った。
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