ぺなるてぃ・らぶ・アナザー3章_3

持つべきモノは親友?


「ちょっとだけ食器片してオンセ(11時頃のランチ前の間食)の準備してくるな。」

随分と長い間そうしたあと、スペインはそう言って名残惜しそうに朝食のトレイを手に部屋を出て行った。

朝一で食べた朝食デサジューノの他に11時頃に軽食オンセ、2時くらいから一日のメインにもなる昼食コミーダがあり、18時くらいに軽食メリエンダ、21時くらいに夕食セナと、とにかくスペインでは食事の回数が多い。

イギリスは普段はそう食べる方ではないが、食べることは決して嫌いではない上にスペインの料理はとても美味しいため、これはすごく嬉しいのと同時に、この支度をしている僅かな時間が唯一イギリスが一人落ち着いて対策を練れる時間でもある。

まあ…有効な対策を思いつくわけもないのだが…。
それでも何か対策をと考え込んでいると、携帯が鳴った。

お試し期間の間に誰か乱入されてはお試しにならないとスペインが主張するため、他への連絡は禁じられているが、発信元を見れば日本…どう考えてもこちらにきまぐれに乱入する性格でもなければ乱入できる距離でもない。

イギリスはためらう事なく通話ボタンを押した。

「Hello?」
『ああ、イギリスさん。今ヴァカンスでいらっしゃるんですよね?
もしかしてスペインさんとご一緒ですか?』

何故日本がそれを知っている…と言えばもう情報の提供元は一人しかないわけだが…マズイ、これは非常にマズイ。
万が一にでもスペインへの告白が罰ゲームだと他の人間の口から耳に入った日には…と、冷やりと嫌な汗が額を伝うが、そこはさすが日本、心の友、世界一空気を読む国だ。

「ご安心下さい。
私はたまたま用があってフランスさんに電話をおかけした時に伺ったんですが、私以外にはまだおっしゃってないとの事でしたので、くれぐれもと口止めしておきましたから。」

ああ、さすが日本。
気遣いの国だ…と、そこまででも十分感動したのだが、日本の気遣いはそこで終わらない。

「あの…大変差し出がましいとは思うのですが…」
と、遠慮がちに始まる提案。

俺が俺がの欧米の面々にもこの謙虚さを見習って欲しいものだ…と、イギリスが

「いや、日本の忠告はいつも適切でありがたいと思ってるぞ。
やっぱり…その…と、友達だしなっ」
と、答えると、電話の向こうで微笑む気配がする。

「ありがとうございます。
私も少しでも大切な大切なお友達のイギリスさんのお力になれればと思いまして…。」

と、イギリスが大好きな穏やかな口調で友達と言ってくれる日本の言葉に、イギリスは感動した。

「もし差し支えなければ、今の状況を教えて頂いて一緒にイギリスさんのためにより良い方向に事態を運ぶ方法を考えられればと思うのですが…」

とまで言われれば、もう隠すなどという選択肢は全くない。

イギリスはフランスとの賭けからスペイン宅に行って、それからこの別宅に来てからの諸々を洗いざらい日本に打ち明けた。

今後これがどういう結果を招く事になるのか、イギリスは当然予想もしていなかった。



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