オンラインゲーム殺人事件あなざーその5・魔王探偵の事件簿_2

「…魔王と天使の図…か?」
「うん…そうだね。」

(…ちきしょー、ひよこみたいで可愛いぜっ!!)
と、撫でまわしたい手がわきわきするのを堪えるギルベルト。

シックな黒の制服のアントーニョの横で真っ白な制服を着るアーサーは、ぴょんぴょんと跳ねた金色の髪や大きな丸い瞳が印象的な幼げな顔立ちと相まって、宗教画の天使か、もしくはふわふわの鳥のヒナのような雰囲気を醸し出している。

自慢げなドヤ顔のアントーニョを殴ってやりたい気分がしないでもないが、それをやったら確実に自分も無事では済まない。

グッと堪えて、アーサーが着替えていた間に来たメールを見せるべく、スマホをタップした。

そして
「んじゃ、フラン、飲み物用意して乾杯しようぜ。」
と、フランをキッチンの方へと促し、
「アーサー、飾りのフルーツ、好きなの選んで来な。」
と、同じくアーサーも促す。

「お祝いだからな。フランの本気ドリンクは飾りもプロ並みだし、フランにいくつか見本作ってもらって、俺らの分もアーサーが選んでくれ。
皆で乾杯の時に写真撮ろうぜ。」
と言えば、自負はしているものの改めてそう褒められてフランは機嫌よく、アーサーも可愛いモノ綺麗なモノが大好きなのでわくわくした顔で、足取りも軽くキッチンの方へと消えていく。



「…で?二人追い出して、何か進展あったん?」
そんな二人を見送って、アントーニョはギルベルトの隣に座った。
この辺りはあうんの呼吸である。

「天使様降臨祝いっつ~わけじゃねえけど、良い知らせだぜ?」
と、ちょいちょいと手招きをするギルベルトに、アントーニョは身体を少し寄せてスマホの画面を覗き込んだ。

「ついさっきエドガーから来たメールだ。」
と言って、ギルベルトはメールを開いた。

『やあ、ギル。
今まで色々聞かせてくれてありがとう。
おかげでようやく犯人が割れたよ。
んで、すぐ糾弾したいところなんだけど、実はそうと知らずに犯人と行動を共にしてる人がいるんだ。
追いつめられた犯人がその人物に危害加えないとも限らないから、とりあえず先にその人物に事情を話して距離を取る様に忠告して、距離を取ったのを確認したあと、主催にとりあえず連絡をいれると共に、みんながいるところで僕の推理を披露しようと思う。
まあ楽しみにしていてくれ。
それでは夜にまた。
エドガー@芳賀耕助』

「…ギルちゃん……」
「おう?」
「これ、やばない?忠告したったん?」
「は?」

ざーっと一通り目を通した瞬間、アントーニョが難しい表情でギルベルトを見やる。
一方のギルベルトは小さく眉を寄せて、もう一度メールに目を通した。

「名誉棄損…は、万が一があっても、まあ主催もいるしおおごとにならないようにするだろ?」
「そうやなくてっ!!」
と、アントーニョは苛ついた口調で、コンコンと神経質にスマホの縁を叩いた。

「よく読みっ!発表すんのはええねんっ!それよりも前の話やっ。
たぶん犯人はイヴとアゾットやねんけど、エドガーは1人やと思っとるで?
と言う事は…たぶんイヴ犯人で一緒にいるアゾットは無関係やと思っとるんちゃう?
共犯のアゾットにイヴ犯人やなんて言うたら…」
「やっべっ!!そっちかっ!!!!」
「しっかりしてやっ。とにかくエドガーに、自分が犯人やと思うとる人間と一緒におる善意の第三者やと思うとる奴は共犯者やって教えたりっ!」

ああ…気になっていたアーサーの件が片付いたところで、エドガーから殺人の件も片付きそうだと連絡をもらって浮かれ過ぎて注意が散漫になっていた…と、ギルベルトは内心舌打ちをしつつ、慌ててエドガーにメールを打つ。

間に合えばいいが……そう思いつつ送信し、しかし返事が来ないうちにフランとアーサーが飲み物のトレイを手に戻ってきた。

二人にはエドガーの事を秘密にしている。
どちらを優先するか…と、アントーニョとギルベルトは顔を見合わせた。

そして悩む…が、アントーニョの
「じゃ、乾杯しよか~。どれが親分のなん?」
との言葉で、ギルベルトも割り切る事にする。

複数回メールを送ってどうなるものでもなし、主催に事情を話してエドガーの保護をあおぐには、証拠がなさすぎだ。

「…ギル?どうした?」

難しい顔のまま黙り込んでるギルベルトにアーサーが心配そうに声をかけると、アントーニョが…(ギルちゃん、こっちに集中しっ)と、肘でギルベルトの脇を突く。

何か言わなければ…とギルベルトも思うモノの、実はこういう場面でのごまかしは苦手だ。

「あ、ああ…。やっぱりドリンクにジャガイモは無理だよなと思って…」

と、思わず目の前にあったものと思いついた物を合わせて言葉を作ってみれば、アーサーとフランはポカンと口を開けて呆け、あまりに怪しい台詞にさすがに何かあったのかと突っ込みが入る前に、アントーニョがフハッっと爆笑する。

「自分、どんだけイモ好きやねんっ!
親分、あんまりイモイモ言う自分と一緒におったから、1人の時もイモ頼むようになってもうて、どないしよと思うんやけど…」
責任とってやっ!と、絡んでくるアントーニョに、
「なんだよ、イモ美味えじゃねえかよっ!イモ食えよ、イモっ!!」
と、ギルベルトが膨れて応じた。

そんな二人のやりとりに、フランは1人まだ固まってるアーサーに
「ギルちゃんはイモ好きでね、なんでもイモ入れたがるのよ。」
と、パチンとウィンクして説明しつつ、ドリンクを配っていく。

「ほら、そこ!口で言いあうのは良いけど、零れるから手はよしてっ。グラス倒れるでしょっ!
ギルちゃんもドリンクはちょっとあれだけど、そんなにイモ欲しければポテトチップでも食べてなさい。」

と、お母さん宜しく言うフランに、食べ物関係だけは素直に従う二人。
とてつもない大人に見えたが、そんなところは年相応、食べざかりの男子高校生らしくて、アーサーは小さく笑みを零す。

こうして無事全員がドリンクを手に取り乾杯。
セルフタイマーで写真を取り、フランがお祝い用に作っておいたご馳走をギルベルトと共に運んで来て、食事会と相成った。


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