ちびちびパニック後編1_青い大地の果てにあるもの番外

「……っっ!!!!」

アーサーとフェリシアーノ…チビ天使組をこっそり少し大きめのポーチの中に忍ばせて羽子がまず向かった先は、ブレイン本部。
そこにはやはり乙女ジャーナルつながりの知り合い、ミクがいる。

ミクの仕事はオペレータなので、あちこちから様々な情報が入ってくるため情報通だ。
何か情報が得られるかもしれない。

そう思って本部長が倒れて副本部長も医療本部に行ったきり戻ってこない、パニック気味のブレイン本部内を横切ってオペレータ室に駆け込む。

そして

「羽ちゃん、珍しいね~。」
仕事にならないと割りきって、こちらもこっそり邪(よこしま)な内容の雑誌をめくっていたミクの手から無言で雑誌を取り上げてデスクの引き出しに隠すと、羽子はミクのデスクの上にポーチをソッと下ろしてファスナーを開けた。

そこで中から出てくるのはチビ天使組…。

まずアーサーがひょこりと顔を出し、キョロキョロ辺りを見回して合図を送ると、続いてフェリシアーノが顔をだす。

そしてすぐ近くに見知った顔を見つけると、フェリシアーノはポーチに入ったまま天使の笑顔で小さな手をブンブン振った。


「は…羽ちゃん…羽ちゃんっ!これっ!!!」
ミクはバンバンと羽子の腕を叩く。
「うん、言いたいことは判るっ。判るよっ」
うんうんと頷く羽子。


それきり無言で口に手を当てたままフルフル震える羽子をチビ天使組はしばらくじ~っと見上げていたが、やがてアーサーは大きな緑の瞳をウルウルと潤ませて
「べ、別に変なモンじゃないんだからなっ!ばかぁっ!」
と、いきなりまたポーチの中に引っ込んだ。

「あ、アーサー、ね、泣かないでっ」
と、慌ててフェリシアーノも中に引っ込む。

「うるせえっ、泣いてなんかないぞっ!ばかぁっ!」
と言いつつ出てこないアーサー。

一方フェリシアーノはやがてまたヒョコっと顔を出し、ヨイショっとポーチの中から完全に出てくると、デスクに置かれたミクの左手に小さな両手を置いてミクを見上げた。

「驚かしてゴメンネっ。でも俺フェリシアーノだよっ。怖くないよっ」
と一生懸命言い募る様子はなんというか…心臓にクル。

「どうしよう…羽ちゃん…可愛すぎてキュン死にしそう…」
「うん…クルよね…」

ボソボソっとかわされる会話がポーチの中にも届いたのか、今度はアーサーがオズオズと顔を出した。

「気味悪く…ないのか?」
不安げにゆれる大きな瞳に、ミクもまた
(この子達連れて失踪していいかな?…だめ?)
と、理性と萌えの間で揺れる。

「いえ…あの…小さい生き物大好きなので…可愛すぎて悶え死にそうです…」
と、かろうじてセーフかもというギリギリのラインを保った返答を返した。

「……そう…なのか。」
と、そこでようやくアーサーもヒョコっとポーチから顔を出す。

「うああぁぁ~~~可愛い…」
顔を両手で隠してブンブン顔を横に振るミク。
先程は必死に叫びたいのを我慢していたが、もうある種カミングアウトしたので遠慮がない。

「女の子って小さなモノとか好きだよねぇ♪」
と、自分もその小さなモノに含まれるのを棚上げにしてニコニコ和むフェリシアーノ。

「と、とりあえず、記念写真っ!お二人と記念写真お願いっ!!」

ミクがデスクを漁って自分のデジカメを撮り出し、羽子に押し付けると、羽子はちらりと二人を伺った。

「うん、いいよ~♪あとで焼き増しして俺にも頂戴ね~」
とフェリシアーノはにこやかに応じ、アーサーは
「仕方ねえなぁ…でも撮ったらちゃっちゃと協力しろよ?」
と、それでもポーチの中からはい出てくる。

「んじゃま、はい、チーズっ」
と、お定まりの合図で天使二人を両手に乗せて満面の笑みのミクをカメラに収めたあと、羽子はミクに事情を説明した。


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