恋愛論-続お兄さんは頭を打った事にしました_2

恋愛論-Side Spain


ずっと長い間欲しくて欲しくてたまらなかったモノが、思いがけずコロンと転がり込んできた…。

それを両の掌で受け止めてポケットにしまってしまった自分の行動が、世間一般的に見て正しかったのかはわからない…。

しかし長い時を生きていれば正しいか否かも時代や立場によって変わるという事はわかっているし、要は自分と自分の優先すべき人間にとって正しければそれでいいのだ…。
スペインはそう納得することにした。


実際…自分達は随分相性がいいのだ、と、スペインは思う。
二人とも親愛の情と恋情の境がかなり曖昧で、感情や立場の変化を嫌う。
もちろん駆け引きも要らない。

例えばそこに綺麗な女性が居た場合、愛の国は言うだろう。
「ああ、なんて美しい女性だ。…でもお前はその100倍も美しい。」
そう言われれば、愛の国にふさわしい感性を持った恋人は、美しいものの100倍の価値を自分に見出す愛の国に感動をして、彼に恭しくくちづけを与えるかもしれない。
恋人にとって、価値あるモノと比べてさらに価値のある自分は素晴らしいものなのだろう。

しかし自分達は違う。
そこに美しい女性など存在しないのだ。
もっと言うなら、相手以外に価値のあるモノなど存在しない。
相手は比較した結果のナンバー1ではなく、唯一無二のオンリー1なのだ。

ある意味愛の国の、『お前は迷いがない』という言葉は正しい。
迷う…というのは迷う対象がある、選択があるということだ。

欲しいものは唯一絶対で…例えそれが手に入らないものでも、いつか落ちてこないだろうか…と天を仰ぎながら、コロンと転がってくるのを愚鈍なまでに待ち続けることしか知らない。

そして…手に入れてしまったら手放すという選択がない以上、逃がさないようにただひたすらに抱え込み、愛で、時に手を伸ばしてくる輩がいたならば、全力で排除する…それだけだ。

そんなまるで牢獄に閉じ込めるような愛情を無理なく受け入れられる器はそうはいない。
自分に捕まえられることで安心できる人間…逃げ道を塞がれなければ不安な人間…そんな稀有な存在が目の前にいて、どうして手を伸ばさずにいられるだろうか…。

世界中から軽蔑されたとて、それがなんだというのだろう。
価値のあるものが唯一自分を認めてくれるなら、そんな事はなんの問題にもならない。

「イギリス…もう寝てしもうたん?」
さっきまで握っていた上着を放り出し、今度はしっかりスペインの寝間着の裾を握りしめてすやすや寝息をたてているイギリスの頬をスペインはソッと撫でた。

唯一無二の愛し子…。

「…親分から…逃げんといてな?そうしたら大事に大事にしたるから。」

ああ、かわええなぁ…と笑みを浮かべ、そして思う。
この子を自分から奪おうとする奴らがおったら…まあ死んだほうがマシ思うくらいの体験はしてもらおか……。

そう…自分らと違って他はないねん…。

暗闇の中…月明かりに照らされて光を放ったのは…green-eyed monster(嫉妬の魔物)



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