恋愛論-続お兄さんは頭を打った事にしました_1

恋愛論-Side England


「すぺいん…?」

欧州会議後、照明を落としたホテルの部屋で目を覚ましたイギリスは、スペインの腕をしっかり握っていたはずの手の中にスペインの上着しか残されてないことに気づいて、じわっと大きな瞳を潤ませた。

思えば物心ついてからずっといつも一人だった。

フランスもアメリカも…手を掴んだと思ったら置いていかれた…。

スペインもあんなに言ったのに置いていくのか…いや…スペインだけはきっと泣けば駆けつけてくれるはず。

この数日で色々起こりすぎてまとまらない頭でそんな事を思いながら、イギリスはまるで親に置き去られた子どものようにしゃくりを上げ始めた。

寂しい…そんな子どもの頃の気持ちは満たされないまま…満たされたと思えばまた押し寄せる。

しかし今回は期待を裏切る事無く、
「もう目、覚めとったん?堪忍な。親分ちょっとシャワー浴びとったんや。」
と、まだ髪から水を滴らせながらも、大きな手がイギリスを撫でるために駆け寄ってくる。

「泣かんといて。親分が悪かったわ。」
抱きしめてくる腕に安心して、また新たに涙が溢れてくる。
バスローブを羽織っただけの胸元に顔を埋めれば、ボディーシャンプーの良い匂いがした。

「あ~…それやばいわ~。ちょっと着替えるから待っといて。」
苦笑するスペイン。
ポカンとその顔を見あげれば、かすかに赤みを帯びた頬を隠すように、チュッと瞼にくちづけが降ってくる。

「親分もほぼ裸んとこ抱きつかれると色々あんねん。まだそれ平気なくらいは枯れてへんからな。」
そう言って離れようとする体温にムッとして、イギリスはぎゅっとバスローブを握った。

「イギリス~。」
少し困ったように眉尻を下げるスペインに
「やだっ!」
と膨れてみせると、
「ほんま、もうこの子は~。襲ってまうぞ~」
ガオ~とふざけた声をあげて、スペインがカプっと軽くイギリスの鼻を噛んだ。

それがくすぐったくて、イギリスがくすくす笑うと、スペインはまた、かわええなぁと笑いながら
「ほんま自分どないしたん?赤ちゃんに戻ってもうて。」
と、クシャクシャっとイギリスの頭をなでて、今度こそクローゼットの方へとむかった。

それでも…呼べばすぐ戻ってきてくれるのをイギリスは知っている。
そう、スペインは懐に入り込んできたものを置いては行かないのだ。


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