オンラインゲーム殺人事件_葵_4章

ネットは意外に怖いらしい (4日目)


翌日…いつものようにアクセスすると、街の広場でコウが待ってた。
『今日は…レベル上げ行かないの?』
見上げて聞く私にコウは
『ユートと姫を待て』
とだけ言って視線を広場の噴水の向こう、雑談をしてるらしい二人のウォリアに向けている。
私も暇だったのでなんとなく二人の会話に耳を傾けた。



男のウォリア、ゴッドセイバーがほぼ一方的に話してるっぽい。

「俺さぁ、今レベルトップだしー、ミッションもちょーやってるしー。
でもゲームだけじゃないしー。
リアルもマジパネェつーかー、俺、鈴木大輔って都立S高の2年なんだけどー、
ちょー背高いしー、ちょーイケメンだしー…」

延々と続く自慢話。
聞かされてるイヴって子も大変だなぁ…と思わず私も同情する。

あ、でもそう言えばオンラインゲームって一緒にいる相手も機械じゃなくて自分と同じように
キャラを操ってる人間なんだよねっ。

今更のように気付いて、ふと隣が気になった。

コウもユートもフロウちゃんも…本当にどこかに実在する高校生なんだ…。
リアルだとどんな子なんだろ~。

「ねえ、コウ…」
『…ん?』
「コウもさ…高校生…なんだよね?」
『だな。このイベントの参加者全員そうだって主催言ってたしな。』
「コウはさ、どんな感じなの?リアル。私はね…」
『ストップ!!黙っとけ、馬鹿!!』
私の言葉をコウはいきなり怒ったような強い口調でさえぎった。

「な…なによ…嫌なら無理に聞き出そうとまでは思ってないよ。でも私の事話すくらいはいいじゃない。
別に変な意味じゃないもん!」
変に誤解与えたかなという気恥ずかしさも手伝って思わず言い返す私に、コウはため息をついてそういうんじゃないと少し落ち着いた口調で話し始めた。

『ネット上だと相手も嘘つけるからな。下手に自分の個人情報漏らすと悪用されるぞ。
俺は自己申告がない限りキャラの性別イコールリアル性別として考えとく事にしてるから、
お前も一応女だって仮定して話するけどな、男でもやばいけど女は絶対にやばい。
実際騙されて呼び出されて乱暴されたりとか、ストーカーされたりとか結構あるんだからな。
女は特に気をつけろよ。絶対に下手に相手を信用すんな。
ましてや誰が聞いてるともわかんない通常会話でリアル明かすなんて史上最悪の大馬鹿野郎だぞ』

そんな事あるんだ……。

『ん…わかった。気をつける』
『わかればよし』
また上から目線で物言うコウ。

いちいちカチンとくるような言い方をするけど、言ってる事が随分大人びててしっかりしてるよな~コウは。
ホントに私達と同じ高校生なのかな……。

そうこうしてるうちにユートとフロウちゃんがインしてきて、念のためとコウが私に言ったのと同じような注意をうながしていた。
二人が同じ様にその話にうなづくと、コウは街の外へ続く門とは反対側、商店街の方へと足を向ける。

『コウ~、そっち反対。外は向こうだよ』
と一応注意すると、コウは足を止めず
『反対じゃない。こっちで正解。お前ら初期装備で俺についてくるつもりか、装備買え』
と言って防具屋さんに入っていく。

『お金…ないんだけど…』
『今回はしかたないから買ってやる。紙装備でうろちょろされても迷惑だからな。これからはちゃんと金策もしろよ。』
相変わらず…俺様口調なんだけど、やっぱり異様に良い奴だ。
結局自力でレベル相応の装備を揃えてたユートは別として、金策も装備もぜんっぜん知らなかった私とフロウちゃんはコウにレベルに見合った新しい装備を買ってもらった。

なんていうか…言う事やる事、保護者というか…親みたいだなぁ、コウって。
そんな感じで、最後に入ったのになんとなくコウ主導で、コウがリーダーのパーティーって感じになってきた。
まあいいんだけどね。楽だしさ。


Before <<<     >>> Next


0 件のコメント :

コメントを投稿