青い大地の果てにあるものオリジナル _3_15_解ける誤解と沸き起こる問題

「あ~あ、休みも終わりかっ!」
翌朝、ひのきは大きく伸びをした。

「楽しかったね」
なずなは言ってベッドから抜け出ると制服に着替える。

「ま、早々敵が来るとは思わないけど、7日もお休みもらった手前、何かあったら真っ先に出動しなくちゃね」
着物タイプの戦闘服のリボンを後ろでキュっと結びながら笑って言うなずなに
「じゃ、俺もだな」
とひのきも戦闘用の制服に着替えた。

そして
「久々に食堂でも行くか」
とひのきが言うのになずなも同意して、二人そろって6区に向かう。


「ねえタカ...」
食堂に入ると一斉にいつもにもましてウェルカムムード満載な雰囲気で、なずなは不審げな表情でひのきを見上げた。

「ああ。なんか...様子が変な気するな...」
なずなの言わんとすることをひのきも感じてうなづいた。

「ひのき、姫、おはようございます」
トレイを手に席につくと、すっかり立ち直って落ち着いた様子のアニーが近寄ってきた。

「ああ、オス」
「おはようございます」
と二人がそれぞれ挨拶を返すと、アニーがにっこり二人に微笑んだ。

「先日は二人とも大変なのにお手数おかけして申し訳ありませんでした」
「いや、まあ元気になったみたいでよかったな。ジャスミンとは上手くやってるか?」

「はい。おかげさまで。
ひのきの方こそ姫大切にしてあげてくださいね、今大事な時期ですし」
意味ありげに言ってなずなに目をやるアニーにポカンとする二人。

「あ、ああ。まあもうすぐ遠征だしな。体調整えとかないと」
意味がわからずに、とりあえずそう答えるひのきに、アニーはハ~っとため息をついた。

「そうじゃないでしょう?妊娠てね、初期が一番大事なんですよ?
遠征よりお腹の子でしょ?」
さらなるアニーの言葉にひのきとなずなはさらにポカ~ンとして顔を見合わせる。

「えと...お腹の子って?なんの事ですか?」
なずなが聞くと、アニーは言った。

「もちろん姫の。
あ、まだ秘密って事でしたけど、もう本部中知ってますから隠さなくても...」

隠してねえっ。なんだそりゃ?!どこのどいつがそういうデマを...」
ひのきがこめかみに青筋をうかべてアニーに詰め寄る。

「デマ...なんですか?でもだってじゃあなんで1週間も?」

「単に疲れ気味だったし遠征前にちゃんと体調整えた方がってレンが手を回してくれただけだっ!デマの出元はどこだっ?!」

「ブレイン...本部です...」
「ったく、またあそこかっ!なずな、行くぞっ!」
ひのきはなずなの腕をつかんでガタっと立ち上がった。

「ぼ、僕も行きますっ!」
やばいことを言ったのか、と、アニーは流血の予感にあわてて後を追う。


そのやりとりを呆然と見つめていた面々が残された食堂。
「子姫ちゃんは...?」
「俺の嫁...」
「子姫ちゃんカムバ~ック!!;;」
フリーダムの一団の嘆く声がシンと静まり返った中にこだました。


「シザー!てめっ、何とんでもないデマ流してやがるっ!嫌がらせかっ?!」
数十分後、ブレイン本部で久々にひのきの怒声が響く。

「え?デマって何のこと?
それよりひのき君、あんまり姫ちゃんの側でイライラしない方が...胎教に悪いからね。
赤ちゃんてね、お腹の中にいてもちゃんと外の音とかきいてるんだよ?」
心底心配そうに言うシザーに、ひのきは大きくため息をついた。

「出元はお前じゃないのか...お前はどこからそのデマ聞いた?」
「デマって?」
「子供ができたってデマだっ!」

「え~!!デマだったの?!!!」
ガタっと立ち上がって叫ぶシザー。

「...ったりまえだろっ!どこの馬鹿がこの時期ガキ作るって?!」
怒り半分あきれ半分で言うひのきに、シザーはがっかりしながらも納得する。

「でも確かにね...
冷静になって考えてみればひのき君がそんな無計画な事するわけが...。
ああ...でも嘘だったのか~。
すごく楽しみにしてたのに。安定期に入ったら盛大にお祝いしようと思ってたのに(泣」

「てめえの楽しみなんてどうでもいい!デマ流しやがったのはどこのどいつだっ?!」
さらに怒るひのきにシザーの口からは意外な人物の名前が出てくる。

「えとね...僕はホップ君から聞いたんだけど...」

「ホップ~?!」
あまりの意外さに一瞬ぽかんとするひのき。
しかし次の瞬間、ポケットから携帯を出してホップに電話する。

「ホップ!お前いったい...」
「あ、タカおめでと~」
出た瞬間怒ろうとするひのきの言葉をさえぎって嬉しそうに言うホップに、ひのきはまた今日何度目かのため息をついてきいた。

「んで?お前はどこだ?どこからそのデマ聞いた?」

「へ?デマ?デマって...ウソだ~!!だって俺タマから確かに...」
出元が割れた瞬間ひのきはホップを放置して電話を切った。

「鉄線の野郎...ひとで遊びやがって!!」
怒りながらまた携帯をかけるひのきの言葉に
「ユリ君の冗談だったわけね。まあありがちなんだけど...楽しみにしてたのに(泣」
とまだシザーがあきらめきれない様子でグチグチつぶやいた。


「はい。鉄線ユリの携帯だよ。なんかあったら発信音の後にメッセージいれといて」
と、留守電のメッセージ。

ピ~っという音がなるとひのきはス~っと思い切り息を吸い込んだ。

「ふざけんなぁっ!!!
鉄線、起きやがれっっ!!起きて10分以内にブレイン本部に来ねえと殺すからなっっ!!!!」
叫んでプツっと携帯をきる。


「ったくいたづらにもほどがあるぞっ、あの馬鹿っ!!」
血管が切れそうな勢いで怒っているひのきの隣で、なずなが小さく息をつく。

「基地中を巻き込んでっていうのは...いくらユリちゃんでもさすがにやりすぎね...」
そんな二人を見てシザーもため息をついた。

「ほんとに...久々に明るい話題でみんなすごい喜んでたのに...」
その言葉にひのきがちょっと不思議そうに聞く。

「明るい話題...なのか?」
「そりゃそうでしょ。赤ちゃんだよ?赤ちゃん。
僕だってすごく楽しみにしてたのに...。
ひのき君が昨日電話かけてきた時なんかファミリー向けに部屋改造しようかなとか色々考えちゃったよ」

「こんな状況で何をのんきな...」
あきれたひのきの声にまだ肩を落としたままシザーは言った。

「こんな状況だからだよ。
忙しすぎて寝る間もなくて物理的に疲れて、味方や身内がイヴィルになって精神的に疲れて、もう心身ともに疲れきってた時にさ、可愛い可愛い姫ちゃんの赤ちゃんだよ?
そりゃあ和むよ癒されるよ?
ブレインでは君に似ても姫ちゃんに似てもきっと可愛いよね~とか言ってて、隣のフリーダムなんかね、今から姫ちゃんに似た姫ちゃんの娘の子姫ちゃんの親衛隊を作るんだって盛り上がってて、ものすごい騒ぎだったんだよ?
君達なんのかんの言って人気者だからさ。みんな二人の赤ちゃんすごく楽しみにしてたの。」

あまりにがっかりするシザーに困ったようにひのきを見上げるなずな。

「ねえ、いっそ今から作っちゃわない?そのための休みあげてもいいよ?」
とシザーは真剣な様子で二人に言う。

「お前なぁ...」
もはやどう反応して良いかわからず、ひのきは頭をかいた。

そんな会話をしていると、
「いったいこんな朝っぱらから、なんだよ?ひのき」
と、まだ眠そうにあくびをしながらユリがブレイン本部に姿を現した。

「お前なぁ...どれだけ人騒がせなことしたのかわかってんのかっ?!」
怒りをあらわにするひのきに、ユリは本当に身に覚えがないと言った様子で
「人騒がせって?一体なんのことだよ?」
と目を丸くした。

するとひのきが口を開くより前に、シザーが恨みがましい目をユリに向ける。

「そうだよ、ひどいよユリ君。
ひのき君と姫ちゃんに赤ちゃんできたなんて。みんな本気にしてすごい楽しみにしてたのに...」

「なに?お前子供なんて作ってたんだ?シザー公認?そりゃまあおめでとう?」

本気で初耳らしい。
演技とも思えない驚いた様子で、ユリは口を開いた。

「鉄線...じゃねえのか?そういう噂流したの」
またわけがわからなくなってきて聞くひのきに、ユリはきょとんとする。

「ああ?どういう事?
私はこのところずっと昼間も部屋で調べ物してたからその噂は初耳。なに?デマなのか?」

「いったいどうなってんだ...悪い。鉄線そのまま待っててくれ」
これはもうユリの名前を出したホップに聞きただすしかない。
ひのきはもう一度ホップに電話をかけてブレイン本部に呼び出した。

数分後、ホップ到着。
「おい、ホップ。鉄線知らねえって言ってるぞ?」
ホップがユリに責任をなすりつけるというのもありえないと思いつつ、到着して即ひのきがホップに問いただすと、ホップは困ったようにユリを見た。

「えと...俺確かに聞いたと思うんだけど?
タマ、今、妊娠出産でジャスティスが一人抜けるとか言ったら反対されるよな?って...」
ホップの言葉にユリはうなづいた。

「ああ、それなら言ったけど...なんでそれがなずなって事になるんだよ?」
「え?だって他にいないじゃん」

「なるほど...ジャスティス違いって事か...」
ひのきが片手を腰にあてて片手で前髪をかきあげた。

「これ以上はここじゃ問題あるな。ちと場所変えるぞ。
医務室の隣にジャスティス全員とシザー集合な」
言ってなずなを連れてブレイン本部を後にする。

そしてアニーとホップ、ユリ、シザー、それにその場に居合わせたルビナスまでそれに続く。

「あの...フェイロンも一緒でいい?その...僕彼にも知らずにデマ流しちゃったし」
フリーダム本部の前でシザーがいうのに
「ああ、好きにしろ」
とひのきは先に進んだ。
そしてその列にすでに食堂にいた部員から事実を聞いたフェイロンが加わる。
数分後、部屋にはジャスティス全員と本部長が二人集合した。



「まだ事実知らん奴もいるかもしれんから先に言っておくと、俺らに子供できたとかって噂あれデマだ」
「なんだ、そうなのか」
コーレアが少しがっかりしたように言う。

「ああ。正確には誤解って言ったほうが正しいな。
鉄線がホップに子供できたジャスティスがいるから戦線から離脱したらまずいか?って聞いたのを、ホップが俺達と思い込んでシザーの説得に回ろうとした事から広まったんだ」

「なるほど。そういうわけか...」
フェイロンがようやく合点が言ったという感じでつぶやいた。

「で、まあ俺らじゃないわけだ。
鉄線でもない。ジャスミンは...アニーの時の一件考えると違うよな?
できてたら今更避妊とかいらねえもんな」
ひのきが苦笑すると、シザーがピキっと固まった。

「ひ...避妊て...ジャスミン、まさかっ!!」
その様子に、ひのきはヤバっという顔をするが、ジャスミンは案外平気な様子でペロっと舌を出す。
そしてアニーがバっと90度頭をさげた。

「すみませんっ!ちゃんと責任取りますっ!
仕事も頑張りますっ!絶対に絶対に大切にしますっ!」
あまりの真剣な勢いに、シザーもさすがに苦笑する。

「まあ...アニー君は昔からジャスミンのことすごく大切にしてくれてたしね...君達も何かあっても結婚できる年だし...。
でも親がなくなってから僕が死ぬ思いで育ててきたんだからね、大切にしてよ?」
と、シザーはアニーの肩に手をかけて、頭を上げさせた。

「はいっ!ありがとうございますっ!大切にしますっ!」
アニーはそう言ってもう一度深くお辞儀をした。


「んで、こっちはその辺にしてもらって、だ」
ひのきが再び口を開いた。

「残るは一人だよな?」
周りの注目を浴びて、ファーはぎゅっとトリトマの腕をつかんだ。

「ほんと...なのか」
コーレアがさすがに驚いて目を大きく見開く。

「ファー、あんたって...一体何やってんのよ!」
とやはり驚いた顔のジャスミン。

あちゃーという表情で額に手をあてうつむいて息を吐き出すユリ。

「だ...だって...特別だったんだもん。特別の相手とする事したかったんだもん。
ひのきと姫だってしてるじゃない。あたし達だけなんでいけないの?!」
半泣きでファーが言う。

あまりにショックが大きかったらしく目を見開いたまま硬直しているシザー。

シンと沈黙が続くなか、ひのきがしかたなく口をひらいた。

「あのなぁ...うん、確かにそうなんだけどな。
するなとは言わねえんだけど、やるならやるで避妊はちゃんとしとかないとな...まずいだろ?」

「だって...そんなの昨日ユリさんから聞いて初めて知ったんだもん」
ファーがプ~っと頬をふくらませた。

「とにかく...レン君にすぐお願いしてこないと...」
シザーが小さく息を吐き出すと、力なく言う。

「お、お願い?」
その言葉にファーが一歩後ろに引いた。

「堕ろすなら早い方がいいでしょ」
シザーの言葉にファーがこぶしを握り締めて言う。

「堕ろさないよっ!産むもん!」
「あの...俺からもお願いしますっ!産ませて下さいっ!絶対に俺頑張りますからっ!」
ファーの言葉にトリトマもバっと頭を下げた。

そのトリトマにシザーはきつい目をむける。

「君もね...もうこの際寝たうんぬんを言っても仕方ないから言わないけど、なんでちゃんと避妊しなかったの?
中絶とかになったら傷つくのは女の子なんだよ?
そういう事をちゃんと考えてくれないような男に大切な妹を任せられると思うの?」
シザーの言葉にトリトマはうつむいた。

「すみません。俺も...昨日鉄線から聞いて初めて知ったから...」

「本当にね...勘弁してよ」
シザーは大きくため息をつく。

「今がどういう状況かわかってる?お互いのためだよ。堕ろしなさい」
感情を押し殺してシザーは言うが、握ったこぶしが怒りで震えているのに気づいて、フェイロンが、ポンとその肩を軽く叩いた。

「嫌だよっ!私産むもん!」
怒鳴るファーにシザーが爆発する。

「いい加減にしなさいっ!子供に子供は育てられないでしょ!!!」

「兄さんずるい!!ひのきたちの時は賛成してたじゃないっ!私知ってるもん!」

「あのねぇ!ひのき君達はちゃんと大人なんだっ!
避妊も知ってればこんな時期に子供作ったら他に迷惑がかかるってちゃんと考えられるんだっ!
君たちはね、二人とも避妊も知らずにセックスして、考えもなしに子供作っちゃったくらい子供なんだよ?!
ああっ!もうひのき君も姫ちゃんもなんとか言ってやってよっ!!」
シザーが叫んでひのき達を振り返る。

なんでもこっちに振るのいい加減やめろよ...という表情のひのきと、困った顔のなずな。
口を開いたのはなずなの方だ。

「あのぉ...言う言わない以前に私根本的にわからない事が...」
「ああ、そうだよねっ!こんなわけわからない人達、僕にだってわからないよっ」
シザーがクシャクシャっと頭をかき回す。

「いえ、そうじゃなくて...」
なずなは困ったようにひのきを見上げた。

「避妊って...なに?」

一瞬にして凍りつく空気。
イラついてたシザーが一瞬硬直して、おそるおそるひのきに目をやる。

視線に気づいてひのきは
「ああ、大丈夫、うちはちゃんとしてるから」
とうなづいた。ホッとするシザー。

「まあ...それはあとで説明してやるから。今は考えないでもいい」
ため息まじりに言うひのき。

「同じじゃん」
ファーがボソっとつぶやくと、
「ですねぇ...」
とおっとりうなづくなずな。

「同じじゃないのっ!少なくとも彼らはひのき君が大人でわかってるからいいのっ!」
あわててシザーが言うのに、なずなは首をかたむけて不思議そうに言う。

「でも...産むのは女ですよ?」

その言葉にポカ~ンとする一同。その中でユリがプ~っと噴出した。

「確かになっ、真理だよなっ」
「子供が...子供産んじゃだめなのかしら?」
真剣な顔でなずなは人差し指を唇にあてる。

「たぶん...私の親もなんにも考えず産んでると思うんだけど...だめなの?」
なずなは答えを求めるようにひのきを見上げた。

「まあ...な。ジャスティスなんかやってれば大人だろうと子供だろうとどっちにしても自分達だけじゃ子育て全部なんてできねえしな。産みたきゃいいんじゃねえか?」

「ひのき君まで何言い出してんの!他人事だと思って無責任なこと言ってないで!
両親共に子供なんだよ?!親が全く子供育てられなかったらどうするの?!」

「他が育てればいいだけじゃないの?こんだけ人いるわけだしさっ」
ユリがシレっと言う。

「ユリ君までそんなこと!
じゃあなに?ファーが育てられなかったら君が責任持って引き取ってくれる?!」
言われてユリはウッと言葉につまる。

「まあ...その時はしかたねえから引き取って自分のガキと一緒に育ててやってもいいけど?俺は。
なずなはほとんど親以外に育てられてるから気にしねえし」

「ひのきっ」
ファーはパっと明るい顔になってひのきを見る。

「死ぬって選択はな、自分でいつでも簡単にできちまうんだけどさ、この世に生を受けるっていう選択はどんなに自分が望んでもできねえんだよな。
生まれてきて失敗だったから死ぬって選択はできても、生まれる前に殺されたら生まれてきたら良い人生送れるはずだったとしてもどうしようもねえじゃん。
でな、そいつが生まれて生きていたら、いつかそいつは誰かにとってすげえ大事な奴になるかもしれねえだろ?
そこでその可能性つぶすってのはさ、それはそいつにとってだけじゃなくて、そいつの事を大事に思えるはずだった人間の可能性もつぶすんだよ。
俺はさ、たぶんなずないなかったらとっくにつぶれてるし、産んだのが17って事はできたってわかった時はお互い16のジャスティスだったなずなの両親がさ、なずな産んでくれた事にすっげえ感謝してる。
だからまあ...いいぜ?そいつらが育てられないなら引き受けてもさ。
...なずなもいいよな?」
言ってひのきが見下ろすと、なずなは嬉しそうにうなづいた。

「うんうん。大変な思いして産まないでも子供できるなんてラッキーじゃない?」
なずなの言葉にひのきは
「だなっ」
と噴出した。

「さすがお館様はいう事がちがうね」
ユリはクスっと笑って言う。

「まあね、私はそこまで懐大きくないからさ、引き取って全面的に責任持てって言われると引いちゃうんだけどさ、子守くらいはしてもいいよ?
なんつーかね、個人的には要る命と要らない命って分類をされるのがね、抵抗あるんだよな」

「俺も!俺もさっ、子守だったら弟や妹ので慣れてるからさっ」
ユリの言葉にホップも手を挙げた。

「俺も...まあもう現場に出る事もそうそうないからな。面倒みてやってもいいぞ。
子供は嫌いじゃない」
フェイロンまで言い出すのに、シザーが苦笑する。

「俺様な君がかい?フェイロン」
「前に言っただろうがっ。本当に他人の世話を楽しむのはその俺様な末ッ子だって」

「ま、兄さん許してやったら?
私も子供がお行儀の良い可愛い女の子だったらたまには買い物にでも連れて行ってあげるから。
これだけ人手があればファーが馬鹿でもトリトマが子供でも大丈夫でしょ?」

かなり辛らつではあるが、ジャスミンが言ったところで、シザーが
「しかたがないね」
と折れた。

「その代わり...トリトマ君には二人分働いてもらうからねっ、覚悟してよ」
というシザーの言葉に
「ああ。二人分でも三人分でも頑張るからっ!」
とトリトマはコクコクうなづいた。

「んじゃ、そういうわけでっ、トリトマお前は基地に残れ」
結論が出たところでひのきが言う。

「なんでそういう事になるかな?」
その言葉にシザーが言うと
「このままじゃ内組アタッカージャスミン一人になるし」
とひのきは当たり前のように言う。

「でもね、敵が本部来るなんて事そうそうないし、本部は防衛システムもあるから遠征メンバー優先だよ?」
シザーがいうのに、ひのきは
「ぶっちゃけ...トリトマ邪魔っ!
こいついなければホップとコーレアが同室で鉄線一人部屋で俺なずなと一緒の部屋になれるし。
安心しろ、トリトマ一人いなくても、なずながいれば俺は無敵の男だから戦闘はなんとでもしてやる」
とにやりと自信ありげに笑った。

「君もさ...フェイロンの影響受けて俺様だよね。もう...しかたないね」
シザーはひのきの肩に手をかける。

そして
「うん、でも頼りにしてるよ、本当に...ありがとう」
と小声でつぶやいた。

「ま、そうと決まれば、だ、トリトマとファー部屋来い。
妊娠初期から中期までの注意点まとめておいたから。それ渡して一通り説明してやる。
私もすぐ遠征で時間があんまないから、ちゃっちゃとな」
ユリが二人に手招きをして、部屋から出て行く。

「女の子だといいな~、きっと女の子よね。ええっ、女の子のはず!
D-ショップのベビー服のカタログ取り寄せよ~♪」
言ってジャスミンがアニーと共にさらに部屋を出る。

「俺は...タマの分も遠征の支度しないと」
と、さらにさらにホップが部屋を出て、最後に

「じゃ、俺達ももう用ないよな?デマ訂正しておいてくれよ?」
とひのきもなずなを連れて出て行った。

そして残される大人5人。

まず口をひらいたのはコーレアだ。
「大人の出る幕なかったな...」
と苦笑まじりにつぶやくと、シランは大きくうなづいた。

「本部は...部長同士もジャスティス同士も本当に良い関係を築いておるのぉ」
と、しみじみと言う。

「なんていうか...こんな環境に身をおいてるのにすれてなくて良い子達よね」
とさらにルビナスが続けた。







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