動揺の朝
「おはようさん。眠かったら寝ててもええけど、とりあえずご飯だけ食べよか~。」
柔らかい声と共に降ってくる口付けで目が覚めた。
眠いし…ダルい。
身体のふしぶしが痛い気がしていると、タイムリーに
「身体大丈夫か?痛ない?」
と、聞かれて、思わず
「痛い…」
と、答えて頷いた。
それ以前に喉が痛くて声がかすれる。
あれ?とぼんやりとした頭で思ったところで、人の気配が近づいてきて、ぎゅっと抱きしめられた。
「堪忍な~。可愛すぎて加減できへんかってん。
今日は全部親分がやったるから、ゆっくり寝とき。」
いや、普段からお前が色々全部やってるし………って、そうじゃねえっ!!
……思い出した…昨晩は確か……
イギリスは額にたら~りと汗をかいた。
やってしまった…。
昨日…流されるまますっかり整ってしまった書類を前にサインをして、仮に作られている個人としての戸籍上とは言え、正式に結婚してしまったのだ。
スペインとイギリス――戸籍上はアントーニョ・ヘルナンデス・カリエドとアーサー・カークランドだが――が結婚て…ありえないだろっ!!
それだけじゃない。
あろうことにその夜は…うあぁああ~~~!!!!
ありえないっ!本当にありえないっ!!!
「…しんどいんか?そんなに痛いん?
…堪忍な。」
どうしようっ?!と思っていると、無駄に整った顔が近づいてきて、どうやら緩いらしい涙腺が決壊して目尻にたまった涙をチュッと吸い取られる。
そしてそのまま優しく頭や背中をなでられて、力が抜けた。
そう…こいつのこういうところが悪いのだ。
スペインは身の内に入れた相手にはとことん甘く優しい。
更に言うなら…本当に甘やかし慣れていて、ついつい絆されてしまうのだ。
昨夜だってまるで華奢で壊れやすいレディを扱うように、終始優しく丁寧に触れられた気がする。
――ほんま、真っ白で綺麗な肌やな。どこもかしこも真っ白で細っこくて、かわええわ…。
うっとりと細めるエメラルドの瞳の綺麗な事。
囁く声はまるで柔らかな羽毛につつまれているように、暖かで心地よい。
――ゆっくりするつもりやけど、痛かったりつらかったりしたら言うてな?我慢せんといて?
と、いたわるように頭をなでながら、何度も、大丈夫か?と確認しながら優しく高められて、堪えきれず女のような嬌声をあげながら何度も上り詰めてしまった。
今思い出しても顔から火が出るほど恥ずかしい。
最中もイギリスがつらくないように自分の欲を必死に堪えて少し顔をしかめる様子が、ひどく男くさく…でも壮絶に色っぽかった。
痛さより辛さよりとにかく気持ちよくて、でも気持ち良いのが怖くてぽろぽろ涙を流して、それを困ったような顔をしたスペインに何度も拭われた。
――堪忍な…。でも止めてやれへん…。一生宝物みたいに大事に大事にするから…ほんま堪忍な?
涙の理由を苦痛と誤解したのか何度も謝罪しながら優しく優しく進めていくスペインに、羞恥のあまり顔を見ることも出来ず泣き続けた。
もう恥ずかしくて死にたい…。
またジワリと溢れてくる涙を指先で拭いながらスペインが
「ご飯は?食べれそうか?」
と聞いてくるのに、イギリスが昨日の話題から離れたくてうなづくと、
「そっか。じゃ、食べよか。」
と、スペインはホッとしたように、いつものように布団の上にシートを敷き、テーブルをセットする。
そして食事の準備が終わると、今日はいつもとは違って自分もベッドにあがって
「身体つらいやろ?親分に持たれとき?」
と、あろうことか、イギリスを抱え込むように座る。
うあぁああ~~~!!!!
何考えてやがるっ!!
こんなんで食べれるわけないだろうっ!!!
と、頭が一瞬真っ白に、顔は真っ赤に染まるが、
「アーティ、疲れとるん?親分が食べさせたろか?」
と、後ろから顔を覗きこまれて耳元で言われて、イギリスはブンブンと思い切り首を横に振った。
今ですら恥ずかしいのに、そんな事されたら憤死するっ!
なのに、結局食べてる端から手が伸びてきて口元を拭かれたり、頬にキスをされたりと、もう羞恥と混乱でいつもは美味しいはずの食事も味なんか全然わからなかった。
正直…途中で気を失うかと思ったくらいだ。
こうしてなんとか食事を終えると、
「じゃ、片してくるからちょっとだけ待っといてな。疲れてるなら寝とってもええけど。」
と、チュッとこめかみにキスを落としてスペインが食器を手に部屋を出て行くと、イギリスは携帯に飛びついた。
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