ぺなるてぃ・らぶ・アナザー1章_5

話は戻って、数日後のスペイン邸。

貧血気味のイギリスを居間に残し、スペインはキッチンで冷蔵庫から冷たいミネラルウォータをだしてグラスに注ぐ。
それにレモンを少し絞って仕上げにサラサラと白い粉。

「とりあえず水分補給しとき。」
と、それをイギリスの前に置く。

それでもイギリスの目はどこか虚ろで、ひどく汗をかいている。
もしかして日射病だろうか…と顔を覗きこむが、普段あれだけパーソナルスペースが広く、他人との距離に敏感なのに反応がない。

さすがに心配になって、
「イギリス?大丈夫なん?病院行くか?」
と、手を伸ばしてソっと頬に触れると、その途端、今までそこにスペインが居ることに気づかなかったとばかり、びっくりまなこで跳ね上がった。

まあ…後ろはソファの背もたれがあるので、身をのけぞらせるのが精一杯というところではあるが…。

それにしても……

――あかん…かわええ……

もうまるでいちいち小動物…うさぎみたいな反応で、手を伸ばして抱き上げて抱きしめて頭を撫で回したい衝動に駆られるが、それをやったら確実に逃げられる。

内心はその愛らしい様子に悶えながらもスペインは表面上は平静を装って、
「なんや、ちゃんと意識はっきりしとるな?じゃ、飲んでおき。」
と、ミネラルウォータのグラスをイギリスの手に握らせてやる。

スペインなら片手で持つそれを何故か両手で持ってコクコクと飲み干す仕草が、子どものようで可愛い。

…というか、容姿も動作も行動も全てがスペインには可愛らしく映るのだから重症だ。
もう、ここで慌てて飲み過ぎたのかむせ返るなんてオプションまで付けてくれて、どうしてくれようと思った。

絶叫しそうな自分を抑え、なんとか平静を装って
「あ~、もう自分今日はどないしてん。大丈夫か?」
と、どさくさに紛れて背中に触れてさする。

小さなピンク色の唇からこぼれ出る水をハンドタオルで拭ってやったのには他意はない…。
いや、なかったのだが、タオル越しに触れる唇に劣情をもよおして、これはやばいと思った。

ここで焦っておかしな行動に出たら全てがおじゃんだ。

スペインは鉄の意志を持って、タオルをイギリスの手に握らせると、

「しゃあないな。病院行くほどやないんやったら、うちで少し休んで行き。
今客室用意してくるさかい、そのまま横になっとってな。
寝てもうたら運んでやるわ。」

と、言い置いて居間から逃亡を図った。


もちろん、客室なんてフランスと話をした日から毎日いつイギリスが来てもいいように完璧に整えてある。
それどころか当座暮らすのに困らないように洗面用具、寝間着、着替えまでバッチリだ。

とりあえずトイレに行って落ち着いてから、スペインはまた居間に戻った。
そろそろ効果が出てるだろうか…。

ソロリとドアを開けると、イギリスはソファの上ですやすや眠っていた。
元々童顔だが、こうして眠っているとさらに幼く見える。

この無防備な顔を普通に見せてもらえるまでにはどのくらいかかるのだろうか…。
それには焦りは禁物だ。

1000年来の片思いを成就すべく、数百年単位で邪魔者を排除し、ようやくここまでこぎつけたのだ。
絶対に失敗はできない…逃がす気などない…。




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