オンラインゲーム殺人事件再びっ5章_2

そのまま下に降りて行くと、当たり前だがまだ全員が起きていてリビングに集合している。

「アリスは?」
と、香達の手前、ギルベルトがゲーム内のキャラ名でアーサーの事をまず聞いてくるのに、
 アントーニョは
「寝とる。」
と端的に答える。


そのうえで少し嫌そうな顔で

「起きたらギルちゃん頼むわ。
俺ちょおでかけるとこできてん。もう少ししたら迎えくるから」

と言うアントーニョの言葉に、ギルベルトは心底驚いたように目を丸くした。


「こんな時にか?」

「こんな時やからや」
即答するアントーニョにギルベルトは少し考え込む。


アーサー命のアントーニョがこんな状況でアーサーを置いてどこかへ出かけるなんて通常ではありえない。

香達のいる所で行き先を聞いて良いモノなのだろうか…と、思っていると、アントーニョの方からあっさりとその行き先を口にした。


「ちょっとローマ爺に連絡つけて、カークランド本家行く事にしてん。
詳しい事は帰ったら説明するさかい、あーちゃんには内緒にしといてな?
心配かけとうないねん。
あーちゃん今、めっちゃまいっとるから細心の注意を払ったって。
出来るだけあーちゃんが目ぇ覚ます前に帰ってくるつもりやけど、事が事だけに早々に帰られへんかもしれんから」

聞きたい事は山ほどあったが、そう言って口惜しげに自分に視線を送るアントーニョに、ギルベルトはうなづくしかなかった。



そして迎えを待っている間、ギルベルトはアントーニョに香から聞いた話を伝える。

とりあえず今回、跡取り問題でもめていて、ローマが送りこんだ味方と共にキーになるアイテムを持ってローマの所までたどり着けば自分達の勝ち、副社長の配下にキーアイテムを取られてローマの所へ行かれたら負けと言うところまで説明を受けると、アントーニョと同じく席を外していたフランは、ホッとしたように

「じゃあ迎えくるならもう行っちゃえば?それで万事解決だよね?」
と提案した。

それに対してギルベルトが異を唱えようとすると、口を開く前に

「フラン、アホちゃう?」
とアントーニョから突っ込みが入った。


「え?お兄さん変な事言った?
別に相手からの迎えの車じゃダメとか制約ないんでしょ?」

目を向ければ自分以外がどうやらそのアントーニョの意見に同意するような視線を送ってきているので、フランは不思議そうに聞く。

「あんなぁ…」
アントーニョは頭をがしがしと頭を掻くと、ちらりと香達の方へと目を向ける。

「確かに香らに関してはそれで勝ってカークランドの側近になれて終わりや。
せやけど、俺にしたらそれじゃあかんのや」

「ああ、もちろん俺達の事は気にしないで。付き合うから。
…っつ~か、お坊ちゃんなのにそのあたりがちゃんとわかってる抜け目のなさにかえって安心したっ」

視線と言葉を受けて香がニカっと笑みを浮かべるのに、フランはますます混乱した。


「え?何?わかってないのお兄さんだけ?」

「そうやで、自分だけやっ」
と容赦ない言葉を浴びせかけるアントーニョに、ギルベルトと香は苦笑する。


「えっとな、つまりは…だ」
と、見かねたギルベルトが説明を始める。

「ここで俺達が勝ったとして、表向きは跡取り側の勝利で跡取りが社長になるのを副社長は阻止できなくなるわけだが、公に阻止できないとなると、裏で色々画策する可能性が高い。
社長になって社内に入り込んでしまえば俺らも身動きとれなくなるし、相手の方も動きを慎重にせざるを得なくて、尻尾をつかみにくくなるから、今、まだ未確定の状態で相手も油断しているところを燻しだしたいわけだ」

「…わかったけど…それ危険じゃない?」

「これ放置でゲーム終了させた方が危険度が増すから。
フラン無理そうなら自宅帰っておいた方がいい。なんならタクシー呼ぶが?」

自分は離脱する気はさらさらないが、フランは確かに正直この手のモノに向いていないと思う。

そんな思いもあってそう提案してみたわけだが、フランは苦笑しつつも首を横にふった。

「トーニョは上との交渉に、ギルちゃんは香と対副社長対策に忙しくなるんでしょ?
そんな中で誰がアリスのご飯つくんのよ?
参ってるなら余計美味しいご飯に美味しいおやつ提供してあげないとね♪」
と、ぱちこ~ん☆と片目をつぶる。

「なんやその顔めちゃ殴りたいわぁ~。」

と、そこでニコニコと返すアントーニョに、フランはひぃぃ~とギルベルトの後ろに回り込み、香達はその様子をにやにやと眺めた。

「俺やってあ~ちゃんに美味しいもん作ってやって、そのあとあ~ちゃんを美味しく頂きたいのに…あ~腹たつわぁ」
と本気とも冗談とも言えない言葉をアントーニョは放つ。

しかしすぐに、せやけど…とため息をついた。

「あーちゃん守らなあかんから…しゃあないわ。
メンタル弱い子やからこんな状況でかなり参っとるし、美味いモン作ったってや。
あ、特に甘いもんな。あの子甘いの好きやから」

そう言い置いて、アントーニョは丁度到着した迎えの車に乗って出かけて行った。



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