フランシス・ボヌフォアの憂鬱
「トーニョって…意外に頭脳派だったんだな」
仲のいい熟年夫婦だったのが新婚バカップルになりました…。
アントーニョがあーちゃんあーちゃんうるさいのは今に始まった事ではないのだが、あの日以来、アーサーの方もそんな感じで、フランはため息をつくしかなかった。
確かにあのベルセルク盾としての立ち回りはすごかったと思う。
ただ、あの程度ならギルベルトがベルセルクをしていたとしても当然やっていたはずだ。
というか…頭脳派というならギルベルトの方が数倍は上じゃないか?
何か面白くない……。
ギルベルト相手ならいいというわけではないのだが、自分とたいして変わらないと思っていたアントーニョがあそこまでやってくれると、ふつふつと悔しさがこみ上げる。
そもそもアントーニョは運が良いのだと思う。
危険な殺人事件がおきている中、普通にアーサーと連絡が取れて、実際に会えて、なんだかアーサーがひどく参っている時にたまたま自宅を訪ねて、そのまま心の支えになれたりしたらしい。
それに比べて自分はどうだ…。
ギルベルトにリアルを明かすなと言われてきちんと自重して、アーサーの方から誘われて会いにいったら実はなり済ましメールで犯人に騙されていて、顔が割れたため狙われて…
そのためにアーサーが巻き添わせるなと会いに行かせてもらえず…気が付いたら自分一人蚊帳の外。
そして…アーサーはいつのまにかアントーニョに掻っ攫われていた。
あの時アントーニョのように忠告無視でアーサーに働きかけていたら…なりすましメールに引っかかる事もなく、会いに行く事を止められる事もなく、自分がアントーニョの位置にいたのかも…と言う考えを否定しきれない。
アーサーは元々親しい友人に恵まれず、他人からの好意に弱い人間だったと聞く。
そんな中で彼に一番に会えた…その効果は大きい。
はっきりいってフランは人当たりはかなり良い方だ。
というか、3人の中で一番モテルし、好意を勝ち取るのも上手な自信がある。
自分が同じ位置にいられたなら…アーサーと二人きりで対峙できたなら、アントーニョに負ける気はしなかった。
終わった事だ、過ぎた事だ、と思う気持ちはもちろんある。
悪友と言えど友人から思い人を略奪などというのは褒められた事ではないし、ギルベルトの言う通り、そんな争いを始められたら一番困るのはアーサーだろう。
諦めたい…だが、諸々のifを考えるとどうしても諦めきれない。
「ね、トーニョ。悪いんだけどさ、お願い、諦めさせて?」
フランは思い余ってアントーニョに頼み込んだ。
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