ローズ・プリンス・オペラ・スクール第六章_2

ルッツと戦闘に出るようになって1ヶ月弱…その間に4,5回戦った中で一度だけ、ギルベルトは身の毛のよだつようなモノを見たことがある。

そう、あれは初回だった。
普段なら3人+αで動くところだが、悪友二人は対を抱えたばかりで、いつもならついてきてくれる先輩達もみんな出払っていた。
感知できる敵は一体とのことで、ルッツと二人…いや、一人と一羽の戦闘練習も兼ねて出向いて行ったのだ。

一人での場所の感知に戸惑って、かなり時間をかけて到着した現場。

そこにいたのは頭部の下に沢山の刺の生えた円筒形の胴体の異形のモノ…。
本体の頭部は髪の代わりに細い触手が蛇のようにうねうねと蠢いていて、顔もモンスターのそれなのだが、問題はその下。

頭部のすぐ下のあたりに人の顔が…そしてその少し下からおそらくその人間のモノらしい手が伸びていた。

人の顔は助けを求める言葉を口にしていて、どう見ても普通の人間が異形に取り込まれたようにしか見えない。

しかもいつもなら向かってくる敵が、その日に限ってはギルベルトの姿を見かけても向かってこないどころか、退却していく。

一方でギルベルトの方も、地面に開いた黒い穴に溶け込んで行くその異形のモノを前にしても、初めて見る人間が取り込まれたような状態のそれに戸惑ったまま動けない。

最終的にはそれが完全に穴に消えて穴が閉じ、魔の気配がなくなってから戻った。
もちろん任務は失敗だが、それよりもギルベルトは嫌な仮説を思い浮かべた。

そして…戻ってそれを理事長に確認して思い切り肯定されて愕然とする。


――俺らは…もしかしてあいつらをおびき寄せる囮…餌なのか?
報告後、そう聞いた時に理事長は苦いものを無理に飲み込む時のように顔をしかめて、しかし最終的に認めた。

「ああ、他の奴らにはまだ言うなよ?」
「事情を聞いてみないと…なんとも返事はできねえ」

この時ギルベルトは初めて理事長の言葉に逆らってそう言った。

ん~まあ、もっともだけどよ…と、グシャグシャと癖のある濃い茶色の髪をかき回して、ローマは少し悩んだが、結局話し始めた。





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