オンラインゲーム殺人事件あなざーその2・魔王探偵の事件簿_2

今日はもう時間差でインする理由もないのでフランシスにも事情を話して早々に3人揃ってインした。
もちろんアーサーもすでにインをして、いつものように噴水の縁に座っている。
今回はアントーニョが即パーティの誘いを送って、アーサーがパーティに入ってきた。

(オーラ、さっきぶり。今日は楽しかったで。
今度は必需品の買い物やなくて、純粋に遊びに行こうな。
一応もうおっちゃんの秘書に学校とアーティの親御さんへの説明と手続きの手配頼んどいたから、少しずつ荷物整理始めといてな。
大変やろうし親分が手伝いに行ったるからな?
無理したらあかんよ?)

とウィスを送ると、

(俺、母親以外の誰かと買い物行ったのなんて初めてで…。
色々やってもらうばかりでごめん。
でもすごく嬉しかったし楽しかった。)

と、返ってきて、アントーニョは内心可愛らしさに悶える。

昨日までは単なるデジタルデータで作られたキャラが発した文字列に過ぎなかった言葉が、あの子に出会ったあとの今は、あの夢見るようにふんわりと潤んだ新緑色の瞳で自分を見あげる天使の小さな桜色の唇から伝えられる心地よい声で脳内再生される気がした。

色々に関してアントーニョとの経験が初めて。
それは独占欲が強いアントーニョの心を非常に満足させた。
自分だけのもの…なんて素敵な響きなのだろうか。

なんや、これっ!初めて?!親分が初めてなん?!!
可愛すぎやろっ!あかん、ほんま他に取られんようにせんとっ!
と、思った瞬間に、スマホで
『夕方頼んだ件、ほんまに大至急やでっ!急いだってな!』
と、大伯父の秘書をメールで急かしてしまったのは、仕方のない事だと思う。

ああ、明日もあの子を訪ねよう、そうしよう。

と、アントーニョがそんな事を考えていると、いきなりゲーム内だけで見られるメールにあたる物、メッセージが来て、幸せな思考はいったん中断された。

送信者は…メグ。どんな奴だったかアントーニョは思い出せない。
興味のないものはいちいち覚えない主義だ。
その手の事を覚えておく人間はちゃんと側にいるので問題はない。
誰なのかはあとでギルベルトに聞いてみるか…と、とりあえずメッセージを開いてみる

『こんばんは。参加者の一人、ウィザードのメグです。
このメッセージは全員に送っています。
知らない方もいるかもしれませんが、今日同じく参加者の一人だったゴッドセイバー君が誰かに殺されました。
原因は断言はできませんけど、このゲーム絡みの可能性が高いと思います。
もしそうだとすると今後残った参加者にも危険が及ぶ可能性は充分あると思います。
そこで皆さん、20時~24時以外でも情報交換等ができるようにメールアドレスを交換しあいませんか?
了承して下さる方は私までメッセージでメルアドを送って下さい。
一応明日21時までにメルアドを教えて下さった方には、私を含めた送って下さった方々全員のメルアドをお送りします。』


『メッセ…来たか?』
しばらく全員メッセージに目を通してたらしく無言だったが、ギルベルトが最初に沈黙を破った。
『お兄さんのとこには来てるよ。』
『俺のとこも…』
『うん、親分とこも来てるで?ギルちゃん、これ誰やっけ?』
全員に送ってると言うのはホントらしい。
とりあえず全く記憶にないので聞いてみると、ギルベルトも知らないらしい。

『今まで接触したことねえから人柄とかキャラとかはわかんねえけど、参加者の1人らしいな。』
と、首を横に振った。

確かにユーザーが一堂に会した事などなかったので、イヴ達のように偶然レベルが近く狩り場が重なったりしない限り、他のプレイヤーに関してはユーザーリストに表示される名前以外は知りようがない。

ともあれ、
『やっぱ…これもダメ…なの?』
昨日ギルベルトと二人の時にリアルを一切明かすなと言われた事を思い出したフランシスがギルベルトにお伺いをたてた。
個人情報は教えるなと言うギルベルトの事だから、反対なんだろうし、飽くまで確認のためである。

まあアントーニョ的にはもう一番欲しい相手の連絡先は手に入れてあるわけだから正直どうでもいい。
が、一応アーサーの手前、口は出しておくことにした。

『ん~。これはええんちゃう?』
『ええ??昨日ギルちゃん、リアルもらすの駄目っていってたし…』
思わず言い返すフランシスに、アントーニョはただし…と付け足した。
『フリーメールの捨てアドな。』
『???』
アントーニョの言う事もわからなければ、てっきりやめとけという答えを返してくると思ってたギルベルトが、あっさり期待を裏切って何も言わないのもよくわからず、フランシスがはてなマークを浮かべていると、
『ああ、これはいい。』
と、どうやら同じ物が見えているのだろう、ギルベルトも同意する。

『まあ…メグを全く知らねえのと同様に他の奴らについて何も知らねえだろ?
こんな機会でもないと、なかなか他のプレイヤーについて知る機会が持てねえから。
誰かが魔王倒すまで逃げ回るのもいいんだが、どうせなら積極的に動いて殺人犯を追い詰めて早く安全を確保してえだろ?』

なるほど…。
確かに一理ある。

『これは全員と接触持って犯人の目星を付けるチャンスだ。』
『ま、そういうことや。
って事で今日ログアウトしたら全員捨てアド用意して、明日こいつのところに連絡な。
で、一応こいつからメルアド書いたメッセきたら、ちゃんとホントにメルアド配ってるのか4人で自分のメルアド言って確認するで。』



そしてその日はそのまま狩りにいそしんで終わった。
もちろんログアウト前にアーサーとの約束を具体的に交わすのも忘れない。

明日、荷造りの手伝いを理由に再度アーサーの自宅を訪ねることにした。



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