ファントム殺人事件 終幕_2

名探偵は事件の顛末を模索しファントムは悲しき生涯を終える


「まるで現実感のない、夢みてえな話だな」

こうして必要な情報を得て部屋を出たギルベルトはサディクに状況を説明した。
それに対してサディクは半信半疑といったように首をひねる。

「これは…夢でもなんでもなくて現実です。
もちろん実際にオペラ座の怪人なんているわけはありません。
これは”ファントム”に扮した”実在の人間”が起こしたれっきとした普通の殺人ですよ。」

「犯人…わかってるのか?名探偵」
言いきるギルベルトにサディクが問う。

それに対してギルベルトが
「あ~、今回の容疑者はですね、初日生徒会室にいた全員です。」
と説明を始めるとギルベルトの言葉にサディクはぽか~んと自分を指差す。
それにギルベルトはうなづいた。

「はい、とりあえずサディクさんも容疑者ということで、俺達4人、サディクさん、松永さん、ローデリヒ、フラン、黒河先生を海陽学園生徒会室へ集めて下さい。
集める理由は…そうですね、こうとでも言っておいて下さい。
海陽のミスコンをオペラ座の怪人になぞらえて、参加者の一人がクリスティーヌに当たる人物の目の前で殺害された。”ファントム”を確保する予定だが、”ファントム”と知らずに関わってしまっている人間に事態の説明をして安全を確保したいので、とりあえず生徒会室に来て欲しい。
こんなところか…」

「わかった。連絡を取らせるぜ。」
サディクが言うと警察官が走って行った。



その後ギルベルト達4人とサディクは学校に向かうため警察を出かけたが、そこで警官の一人が慌てて追って来てサディクを引き止めて耳打ちをする。

「そうか。わかった。詳しい事がわかりしだい連絡しろ。」
サディクの顔色が変わる。

「どうやら…手遅れだったらしいぞ。」
警官が下がると、サディクはギルベルトを振り返った。
「今学校の方に生徒会室を使うため門を開けておいてもらえるよう連絡をいれたんだが、すでに門はOBの依頼によって開けられている状態で…」
「黒河先生…ですか?」
サディクの言葉をギルベルトがさえぎる。

「ああ…もしかして…先生が犯人だとわかっていたのか?」
サディクが少し驚いたように言うのに、ギルベルトは
「ある意味…ですね」
と微妙な肯定の言葉を使った。

「予測はついているみたいだが念のために説明すると、黒河は学校のイチョウの木で首吊り死体で発見されたそうだ。おそらく自殺だろう。側にワープロ打ちだが遺書があった。
それには今回の一連の事件への関与を認める記述があったそうだ。
内容はお前の携帯に転送するな。」

普通ならまず入って来ないリアルタイムに近い情報。
さすがOBいると便利だな、とギルベルトは苦笑しつつ転送された遺書に目を通した。

そこには学校でアーサーに一目惚れした事、しかしアーサーには年齢相応のパートナーがいるので自分のような老人はふさわしくないであろうと思った事、それでもアーサーのために何かしたいと思った事が綴られていた。

そして…アーサーに花を贈り、アーサーがミスコンで優勝するのに邪魔になるであろう有力な候補者を排除しようとした事、しかし自分のした事を振り返るといつまでも逃げ切れないであろう事を悟って死を選ぶ事にしたと書かれている。

それをギルベルトと同じく読み終え、
「老いらくの恋という事で…事件解決か。呼び出しキャンセルしていいか?」
と、サディクが言うが、ギルベルトは首を横に振る。
「いえ、解決はしてませんよ。ただ、犯人が確定しただけです。呼び出しはそのままでお願いします」
と、そのまま外へと足を踏み出した。

そして…黒河の遺体発見現場に向かう警察に混じってサディクと共に海陽学園につくギルベルト達。
そのまま生徒会室へ一番乗りで辿り着く。






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