幸せ家族の作り方_9

「親分な~、仕事でこの子の家行ったんや。
で、その時部屋でこの子と赤ん坊が泣いとってな。
赤ん坊がミルク飲んでくれへんて自分も一緒に泣いてもうてん。
めっちゃかわええやろ~。
もう親分そこであかんかった~。惚れてもうた~。」

――確かにこのベッラは可愛いけど、惚れた状況がそれか?
お前の惚れる基準がわかんねえ…。――
「とりあえず赤ん坊はお腹すかせてるみたいやったから離乳食作ったって、この子少し休ませてやって、起きてから赤ん坊やこの子のモン買いに街に連れていってん。
お店の人とかに『可愛い赤ちゃんですねぇ、顔立ちと髪はママ似で目はパパ似ねぇ』とか言われてんで。」

――どう見ても怪しいロリコン犯罪者と被害者少女だろうか。
店の店員、さっさと通報しろよ――
「で、家帰って3人でメシ食って赤ん坊風呂入れて3人でベッドで寝ててんけどな…」

――こんな怪しい男といきなり同じベッドで寝るな。警戒しろっ。――
「せやけど、日付変わるあたりでいきなり赤ん坊が消えてもうてん。
親分めっちゃ慌てたんやけど、この子いわく、赤ん坊は未来のこの子の子どもで、その日1日預かる約束やったから、未来に帰ってしもたんやて。」

――夢か?夢の話なのか?――
「で、それ聞いて親分カ~ってなってもうたんや。
未来で他の男がこの子に赤ん坊産ませて、今日の親分みたいにこの子と赤ん坊に囲まれてるんかって思うたらもうあかんかった。
そんなん嫌や~って。
そんでな、どうしたらそんなんにならんですむかな~って考えてん。
で、この子がお腹に子どもおる間は他の男と子ども作れへんやんって思うて、強引に抱いてしもうて、子どもできるまでは~思うて別宅に連れて帰ってん。」

――どこの男性向けゲームだっ!完全アウトじゃねえかっ、コノヤロウ!!!――
「いやいや、そのあとちゃんと思い伝え合って今は両想いやから大丈夫やて」

と、顔の前で手を振るスペインに、ロマーノはハッとする。

「あれ?俺もしかして口に出してたか?」
「うん、逐一しっかり感想口にしてたよ、兄ちゃん。」
と、後ろでイタリアが言う。

「まあ口に出しててもいいか。お前…それ十分凶悪犯罪じゃねえかっ!
つか、どこまでホントだよっ!」
「全部本当のことやで~。
あ、でも今は別に子どもできるまで~とか思って監禁してるとかやないで?
ほんまお互い好きで一緒にいるだけや。他の男の子どもをとかも思うてへんし…」

「えっと…ちょっといい?」
そこでイタリアがヒョコっと手をあげた。

「今の話が全部本当の事だとしてね?」
「うん、ほんまの事やで?」
「スペイン兄ちゃんなんじゃないの?」
「何が?」
「その子の未来の赤ちゃんの父親って…。だって今お腹に赤ちゃんいるんでしょ?」

ピタっとレースを編むイギリスの手の動きと、スペインの動きが止まった。

「イギリス…それやっ!!」
「まじかっ!!」
次の瞬間、二人して顔を見合わせて叫ぶ。

「なんやあ~~!!この中におるんがアリスやったんかぁ~!!
親分めっちゃ焼いて損したわぁ!」
イギリスに駆け寄って、大きなお腹に頬ずりするスペイン。

「損したわじゃねえっ!!あの時俺がどんだけ怖かったと思ってんだっ!!」
「いやあ、堪忍、堪忍なぁ~。親分てっきり余所の男に二人の事取られてまうって焦っててんもん。」


「…兄ちゃん……今……」
「ああ……イギリスって……」
硬直するクルン兄弟。

「可愛い~~!!!」
「まじかぁああ~~!!!」

イタリアは両手をあげて飛び跳ね、ロマーノは頭を抱えてしゃがみこんだ。

こうして4人それぞれ阿鼻叫喚。
会議時間をすっかり忘れて騒いでいるところにイタリアを探しにきたドイツが乱入。
戻ってこないドイツをさらに探しに来た日本やらフランスやら各国が結局大騒ぎ。
その日の会議は始まりもしないまま踊りまくって1日が終わったのだった。



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