幸せ家族の作り方_1

ハッピーバースディ☆ハッピーライフの続きです。

読んでない方のための【ハッピーバースディ☆ハッピーライフ】あらすじ

2月12日、自分の誕生日の日に急遽イギリスとの会議が入ったスペイン。
不測の事態が起こったらしく何故か仕事場に来ないイギリスに会いにイギリスの自宅を訪ねた時に、赤ん坊と一緒に泣いているイギリスを発見する。
そこでスペインはどうやら空腹で泣いている赤ん坊に離乳食を作ってやり、赤ん坊をあやすイギリスの意外な一面にほだされて、一緒に育ててやる事にした。
途中、スペインが来る前に使った魔法が発動して女になってしまったイギリスと、まるで普通の夫婦、赤ん坊を交えて普通の親子のように過ごすうち、自宅で自分を祝うために待っていてくれている可愛い子分や悪友たちの事すら後回しで良いと思うくらい、すっかり絆されて幸せを感じ始めていた。
しかし日付が変わった瞬間、赤ん坊は光の中に消えてしまう。
動揺して赤ん坊にもう会えないのか?と泣くスペインに、イギリスはあの赤ん坊が未来のイギリスの子どもで、もともと今日いっぱい未来の自分から預かっていたということを告げる。
それを聞いてスペインの脳裏に浮かんだのは…







今年の誕生日はケーキもプレゼントもなかったが、思いがけず幸せだった。

可愛い愛妻と愛娘に囲まれた1日…。
子育てなど久々だったし、そもそもがロマーノだって引き取った時は幼児くらいの大きさだったから、赤ん坊の世話など初めてだ。
バタバタと色々騒々しく…でも楽しい1日だった。

慌ただしく、しかも楽しすぎて、終わりが来るなどとは想像もしていなかった。
なのに日付が変わる時、愛娘は突然光の中に消えていった。

そしてイギリスから伝えられる衝撃の事実…
赤ん坊…アリスは未来のイギリスの子どもだという。

イギリスと…誰かの子ども……頭にカ~っと血がのぼった。
今日並んで歩いた自分の代わりに…未来で誰かが自分の愛妻と愛娘に囲まれている…。
愛しい愛しい自分の家族を誰かに奪われる……


そんなの許せるわけないやんか!!

「……自分……誰と子ども作る気なん?」
「…へ?」
「…言ったり?親分そいつ叩き殺したるわ。」
「…ええっ??」
「…浮気は……許さへんで?」
「なんでそうなるっ?!!!」

澄んだ大きな新緑色の瞳が戸惑いに揺れる。

眉毛以外たいして男の時と変わらない気がするが、白い肌もバラ色の頬も小さく整った鼻も紅も引いていないのに淡いピンクのぷくりとした唇も、ひどく可愛らしく愛おしい。

こんな愛らしい存在がすぐ側にいたというのに視線も合わせなかったなんて、自分はなんてもったいないことをしていたのだろうと思う。

そのせいで…この狂おしいほど手に入れたい存在が他の男のものになるのか……

許せへん…そんなん絶対に許せへんっ!!!
身体中の血が怒りに沸騰した。

絶対にゆるせへん!この子を奪う奴はみんな殺したるっ!!
最近は争う必要もなく、すっかり丸くなったスペインではあるが、元はヨーロッパでも最も苛烈な部類にはいる超武闘派国家だ。
いったんその闘争心に火がつくと、自分でも制御できない。
冷静さを欠いた頭で奪われないための手段を必死に考える。


「ああ…そうや……」
そこでスペインは思いついた。

「そうや…子ども…作れへんようにしたらええんやね?
すでにお腹にいる間は作れへんよな?」

妊娠中は新たに妊娠することはない。
だったら身ごもれないように妊娠させればええんやないか……。

発想からしてすでにおかしい…が、冷静さを欠いているスペインは気づかないし、今日一日和やかに…それこそ太陽のように力強く優しく照らしてくれていたスペインの豹変ぶりに動揺しまくっているイギリスも気づかない。

「ちょ…ちょっと待てっ!!」
不穏な空気に慌てて身を起こそうとするイギリスの肩を軽く押さえる。
スペインにとって幸い、イギリスにとって不幸な事に、今現在肉体的に女性化しているイギリスと、怒りにリミッターの外れたスペインの腕力の差は比べるべくもない。

「ええ子やからジッとしとき?乱暴にしたいわけやないねんで?」

どこか正気を失ったようなスペインの目に、イギリスは身をすくめて身震いした。





こうしてどのくらいの時がたったのだろうか…
全てを終えたスペインがようやく呼吸を整えて見下ろすと、イギリスはグッタリと気を失っていた。

これで……つなぎとめられたんやろか………
……傷つけたやろか……まあ…そうやろな…。

苦い想いがスペインの胸中を横切るが、それでも……取られたくない……と思う心は止められない。

――堪忍な。でも…お願いや。俺に縛られたって?
シン…と静まり返った部屋の中…スペインは一人静かに涙をこぼした。



>>> Next


0 件のコメント :

コメントを投稿