天使な悪魔_1章_1

プロローグ


「ちょっとそのバス待ってくれっ!!」

今にも出発しそうなバスにアーサーは必死に駆け寄った。
これに乗れなければターゲットを見失う。
万が一それで作戦失敗すればリストラだ。

路頭に迷う…それは社会に出たことのないアーサーからすれば死刑宣告にも近かった。


アーサー・カークランド17歳。
かつては天才少年と謳われ無敗の軍師として作戦司令部の基地内の奥深くで大事に大事に育てられていた。
それがここ数カ月、無敗神話が敗れ、輝かしい彼の人生に影が落ちる。

その原因こそが今回のターゲット、アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドだ。

普通ではありえない発想でかき回してくれる彼の行動のおかげで、アーサーの綿密にして完璧な作戦がことごとく失敗し始めたのだ。
そうなると軍も手のひらを返したように冷たくなった。

そして最終宣告…今後1年以内にカリエドをなんとか出来なければクビ…。

元々孤児だったアーサーには軍を追い出されたら帰る場所などない。

IQの高さゆえ幼い頃から軍に引き取られたため、普通の日常生活など送った事はない。

当然ながらデータを解析して作戦を立てる…その他の生き方などしたことはない。

そして…これが一番重要なのだが、幼い頃から軍のモノとして管理されていたため、必要な物資は与えられていたが、給料なるモノをもらった事がない。

そう…あれだけ貢献したにも関わらず個人資産がないというおまけ付きだ。

軍を追い出されたら野垂れ死に決定である。

ということで何としてでもカリエドを仕留めなければならないのだ。

とりあえず…戦闘中がダメなら平常時に本人を殺るしかない。

幸い味方に関しては情報を引き出す事はできるため、カリエドが休暇中で中立地帯のシーライト地域に来ているという事はわかった。

時間もないことではあるし、こうして取るものも取り敢えず飛び出してはきたものの、アーサー・カークランド…彼はスパイどころか一般人としても初心者であった。



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