馬鹿っぷる危険!会議はピンク色_1

世界で一番お兄さま


「フランスっ!待ってたんだぞっ!!」

世界会議当日…主催国として早めに会場にたどり着いたフランスが美の都パリにふさわしいご自慢のビルの自動ドアをくぐって足を踏み入れたエントランスで仁王立ちしていたのは某超大国。

ヒッ!と思わず隣にいた悪友にしがみついたのは仕方のないことだと思って欲しい。
この時点でフランスのHPはすでに0だったのだから…。


前回の世界会議後、色々あって世紀の馬鹿っぷるが誕生した。

数百年スペインに片思いしていたイギリスと、そのイギリス相手にストンと恋に落ちてしまったスペインだ。

普通の相手ではついていけないレベルで愛情が重い者同士、丁度いいというかお似合いというか…まあめでたい話ではある。

……ただし他を……主にフランスを巻き込まないでくれたら…という限定ではあるが…


それでなくても人馴れしない奥手なイギリスの数少ない気心のしれた相手であるフランス。

もちろんそこには色っぽい感情などなく、もうよく知られた腐れ縁…よくても兄弟の情のようなものしかない。

しかし思考はイギリス一直線、イギリスを世界で一番可愛いと豪語するスペインにとっては、イギリスに近づくモノ=みんなイギリスを狙っているモノに見えているらしい。

そう、ここまで言えばわかるだろう。

スペインの脳内ではフランスは可愛いイギリスを狙う極悪人の筆頭に位置づけられているのだ。

そんな独占欲の塊の保護者兼恋人様の心中を慮る事なく、イギリスは今まで通り何か都合が悪くなるとフランスに無理難題を言いに来る。

先日…それで色々あって、イギリスの暴挙を止めようとマウントポジションを取ったところに丁度駆けつけた恋人様は、その光景を認識した次の瞬間、元祖元ヤン帝国様へとジョブチェンジなさった。

「二度とアホな真似できひんように潰してお姉さんにしてやろうか…」

と、ドスの効いた声で言われた時に、まだ何もされていない股間に激痛が走った錯覚を覚えて思わず窓から逃げ出してしまったのは男として仕方のないことだろう。

こうしてフランスが逃げた先は、翌日の会議に備えて前日からホテルに泊まっているドイツに随行していたプロイセンの部屋。

そのまま泊めてもらって翌朝、スペイン怖さに一緒に付いてきてもらったわけだが…フランスはすっかり忘れてた。

というか…今日は世界会議ではなくヨーロッパ会議だからと油断していた。

馬鹿っぷる被害についてブログで嘆いた時に、怒涛のメールを送ってきたのでスルーしておいた、イギリス大好きっ子の某超大国の存在を……。




「フランス、どういうことだいっ?!あれは質の悪いフレンチジョークなんだろ?!
まさか本当の事だとか言わないだろうねっ?!
君がついててよもやスペインとイギリスが本当に……」

ジリジリと迫ってくるアメリカにフランスはプロイセンの後ろでジリジリと後ずさった。


「お兄さん…ほら、会議の支度しなきゃだし?」

冬だというのに全身に汗をかきながら言うフランスに、アメリカはピキっとこめかみに青筋を浮かべる。

「あれが本当の事だって言うなら…俺にも覚悟があるんだぞ。
ちょっとフランス、会議なんてどうでもいいから来なよっ!」

しかしそこでグイッとフランスの腕を掴んだアメリカの手を、何故かプロイセンがいともたやすく外してみせた。

「ちょっと待て、お前。」
外したアメリカの腕を掴んだまま淡々と言うプロイセン。

一方、決して弱くはない力でつかんだはずの腕をあっさり外されて、アメリカはぽか~んとしている。


「お前は大人だよな?」
と、そこでアメリカが我に返る前にニコリと笑みを浮かべて畳み掛けるプロイセンに、アメリカは

「もちろんだぞ!子どもじゃないぞっ!」
と、大きくうなづいた。

いや…大人って言われてそこまで嬉しそうな顔する時点で十分子どもだから…と、フランスは心中思うものの、そこは空気を読んで黙っておく。

「おまけに…きちんと説明すればモノの道理もわかる理性的な大人の男だ。そうだろう?」
「もちろんだともっ。君はわかってるじゃないか。」

目に見えて機嫌が良くなってきたアメリカに、プロイセンは続ける。

「伊達に昔お前を鍛えてないからな。」
「ああ、そうだったね。君の訓練はずいぶん厳しかったけど、役に立ったんだぞ。」
「そいつは良かった。」

かつてプロイセン式で鍛えられたことのあるアメリカは、当時随分と厳しくされた相手に大人になったと認められた事が誇らしくも嬉しいらしい。

(このあたりが…まだまだ子どもだよね)
と内心さらに思いつつもフランスが黙って見守っているうちに話は進んでいく。

「俺もわからねえ奴には注意なんかしやしねえが、賢明なお前ならわかるな?
今日は確かにEUの会議だが、その影響は世界におよぶ。
特に今はどこも経済良くねえしな。
世界で一番忙しいんであろうお前がわざわざ訪ねてきたっつ~のは確かに緊急の用なのかもしれねえが、あくまで個人の事情だ。
世の中の道理も知らねえ子どもじゃねえんだし、大人の男としてはもちろん会議が終わるまで待つくらいの時間的余裕は見て予定組んでるよな?」

「も、もちろんなんだぞっ。俺だってもう大人だからねっ!」
「さすがアメリカだ。じゃ、会議終わった頃にまた来い。」

ポン!と自分よりかなり大きなアメリカの背中をプロイセンは軽く叩いて出口の方へとうながす。

そして自分は奥へ一歩、歩を進め、そして
「フランス、行くぞ」
と、足を止めてフランスを振り返った。

「ギルちゃん、も~素敵っ!お兄さん惚れ直しちゃったよvv」
ハッと我に返って駆け寄るフランス。

「まあ俺様にかかればこんなもんよっ!もっと褒めていいぞ!」
ケセセっと笑うプロイセン。

先程までのシリアスな兄貴分キャラから一転、いつもの騒々しいおちゃらけキャラに戻っている。

「も~!ギルちゃんたら男前っ!世界一っ!抱いてっ!!」
「それはやだっ!」
「え~!お兄さんこれでも若かりし頃はそっちでもモテたんだけどなぁ…」

こうして超大国に踏み潰される危機はいったんは去った。
そして悪友二人は会議場入りをして、会議の準備を始めたのだった。



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