オンラインゲーム殺人事件_ユート_15章

祝宴後


この会場に居たくないとコウは帰りたがったんだけど、もうそうそう全員集まれたりはしないかもだから、とりあえず場所を移そうという事になった。

そして豪華ホテルから一転、いきなりファミレス。



「ねえ、結局犯人てイヴちゃんだったの?」
アオイは6人揃ってからたぶんずっと持ち続けていたらしき疑問を口にした。
「消去法で行くとそういう事になるね。」
情報を持ってるんだろうコウはさっきの話で考え込んでるのか無言だから、俺がそう答えておく。

「そそ、私とヨイチはぜんっぜんそのあたりの事知らないんだけど、結局何がどうなってるわけ?」
映も身を乗り出すが、一番情報持ってるはずのコウはその話が出てもさらに無言。

悩んでるよな…。
こういう自己犠牲って本気で止めた方が良いと思うんだけど、コウに言っても無駄なんだろう。
ま、俺らもそういうコウの性格のおかげで今こうして無事でいるんだろうし。
くら~く考え込むコウになんとなく無言になる一同。

そんな空気を一掃したのは、ゲーム内と同様、空気を読む気がないのか合わせる気がないのか、あくまで自己都合を主張するお姫様。

「旅行…行きたいですねぇ」

ニコニコと…それはそれは楽しそうに切り出した。
まさに”無邪気でふわふわと楽しそうな”笑顔。
この暗~い空気の中でそれって、ある意味すげえ。
本気で別空間に生きてるよ。

まあ…実物見てみれば、それで空気読めね~って眉ひそめる気にもならんくらい、めっちゃ可愛い笑顔だったりするわけなんだけど…。
むしろ暗くなってる方が”空気読めなくてごめんなさい”って言わざるを得ないような、壮絶にして圧倒的な可愛さ。

「夏休み最後ですし…今年ゲームがあったので、私全然遠出してないんです~」
と、三葉商事の跡取りとか今回の殺人事件とかより、そっちの方が大問題という様に、きっぱりと訴えてるよ。
んで訴えられた彼氏の方は…やっぱり”空気読めなくて暗くなってごめんなさい”という気になったようだ。
「今からじゃ…宿取れないぞ…」
と、顔を上げて答える。
「大丈夫っ♪泊まるだけならうちの別荘でっ♪」
ってコウが乗ってきたところで半ば強引に話を進めるお姫様。

「んじゃ、行ってくればいいだろ」
一応彼氏の方はそれでも抵抗を試みてる?
「一人じゃ…楽しくないじゃないですかっ」
「…アオイ誘えばいい」
「女の子だけじゃ…不用心じゃないですかっ。皆で行きましょうっ」
ま、勝てるわきゃないな。これまでの色々見てると。

「……姫…」
「はい?」
コウがいつものようにため息をついてお姫様を振り返った。
「…あのな…一般的にはな、若い女の場合、若い女だけより若い男と泊まる方が不用心なんだぞ…」
と、ごもっともな意見を述べてみても
「コウさん……」
「…ん?」
「まさか若い女性と見ると誰彼構わず襲ってみたくなる人…なんですか?」
と返されたりした日には…。
ごめん…俺飲んでた水吹き出しちゃったよ…。
一方コウの方は
「…っな……なわけないだろっ!!!」
と、真っ赤になって思わず立ち上がる。
「じゃ、大丈夫っ。私も幸い襲いたくなる人じゃないので。」
にっこりと…それはそれは天使のような笑顔でのたまわるお姫様…。
負けてるな…コウ。
尻ならぬ天使様の羽根の下に敷かれてるって感じだ。

「コウさん一緒なら何があっても安全ですし、両親も許してくれますしっ♪」
「……お前の両親…変だよな、絶対…」
コウはジト~っと呆れた目をその美少女に向けながらも諦めのようなため息をつく。
旅行決定みたいだ。

「ちょっと待った!フロウちゃんとコウって…いったいどういう関係?」
そこでようやく二人の関係に気付いたらしいアオイが乗り出して聞くが、それをコウは制して
「あ~、色々あってな。もういい、出先で話す。お前ら明日から5日ほど、予定大丈夫か?」
と、話を進め始める。
結局…リアルでもこうやって振り回されてたわけね。
まあどうせ振り回されるならジジイより美少女の方が楽しそうではあるけど。

「俺は平気。上と下に囲まれて親ほとんど俺の事気にしてないしっ」
アオイと旅行なんてチャンス、逃す手はないっ。
俺は一番に参加表明。
「あ~、あたしも全然平気っ!コミケ前なんてほぼ友達ん家で自分の家帰んないしっ、親もう諦めてるよっ」
どうやら面白がりなんだろう。映も即シュタっと手を挙げる。
「俺は……友達とでかけるって言ったら…多分親泣いて喜ぶと思う…」
ってヨイチ。どういう親だよ。

「おしっ、姫ん家は送りついでに俺が話すから…アオイは?一応女だし親平気か?」
そう!それだよなっ!アオイが来なけりゃ旅行の意味半分ないんだけど…。
ドキドキしてアオイを伺う俺。
「ん~、うちも割と放任だから…。まあ…さすがに知らない相手だとなんだし、フロウちゃんにチラっと顔を見せてもらえれば、親も恐れ入ると思う。」
やった~!!!
アオイの言葉に内心ガッツポーズな俺。

「おっけ~、んじゃ、アオイん家寄ってから姫ん家だな。
一応…支度もあるだろうし、今日はこれで解散か。
で?別荘どこだって?姫。それによって待ち合わせ場所決める」
なんだかすっかり元通りのコウ。
ある意味…生真面目で…ともすれば悲観的になりがちなコウみたいな奴には、こういうお気楽で楽天的で無邪気なお姫様が向いてるのかもな。

結局お姫様の別荘は蓼科ということで、待ち合わせは新宿に9時決定。
その日はとりあえず解散とあいなった。




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